定例会報告

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3月定例会

日時:平成29年3月21日(火) 19時より

場所:大阪凌霜クラブ セミナールーム

講師:竹田 忍氏(日本経済新聞社 編集委員)

演題:「日経新聞の読み方」

今回は、日本経済新聞社の竹田忍様を講師にお迎えし、最新の時事ネタからエネルギー関連、防衛産業、世界情勢など、私たちが日経新聞でよく目にする話題を中心にお話頂きました。

まず、時事ネタ「学校法人森友学園/瑞穂の国記念小学院」の話題から。同学園経営者の際立ったキャラクターも相俟って、マスコミでも大きく取り上げられているこのお話、もともと豊中市の土地売買価格が不当に安いとの指摘が発端となっておりますが、(すぐ近隣の小学校ご出身という)竹田講師からすると、同地は過去から土壌汚染や飛行機騒音問題を抱えている場所にあり、売買価格自体は決して不当とは言えないものの、そもそも環境に懸念のある土地の上で教育を行おうとする姿勢には大きな問題がある、と指摘しておられました。

次に「リチウムイオン電池」のお話。同電池は、開発者がノーベル賞候補にノミネートされる程の画期的な商品で、現在、車や電化製品等様々な用途で利用されておりますが、一方、釘が刺さる等の衝撃により、一瞬で爆発的に燃焼し有毒ガスを排出するという危険性もあることを、爆発時の写真も交えてわかりやすくご説明頂きました。また、その危険性を排除した“燃えない電池”を開発したベンチャー企業(*)についてもご紹介頂きました。

(*)参考 「燃えない電池に挑む」日本経済新聞出版社、著者:竹田忍

次世代自動車の開発では、リチウムイオン電池を大量に搭載する電気自動車メーカー(テスラ等)が、トヨタ等エンジン車メーカー(含む燃料電池車・ハイブリッド車)と競い合っておりますが、今後の勝敗は、TV(液晶・プラズマ)同様、性能の優劣だけではなくプレイヤーの数にも左右されるだろう、と予測されておられました。 ちなみに、日本は同電池の開発当初、世界の先頭を走っておりましたが、2000年代に入り、他国企業の札束によるスカウト活動で技術流出が進んでしまい、結果、一気に追い上げられてしまった経緯があるそうです。

続いて日本の「防衛産業」の話題。

①海上自衛隊の最新潜水艦「そうりゅう(リチウムイオン電池搭載)」は、船尾をX型にすることで旋回等の機動性を向上させた他、スクリューの改良で水中抵抗による雑音発生を低減、敵からも探知されにくくなった、

②“辛坊治朗救出”で一躍脚光を浴びた救難飛行艇「US-2」は、時速100キロという遅い速度でも飛行できる能力を備えており、更に着水時の衝撃を減らす工夫も凝らされている、

等の事例を挙げ、日本の防衛産業も実力は有る、とお話されました。

「原発」に関しては、福島原発や美浜原発の事故について、エピソードも交えてお話頂きました。美浜原発の事故の際、関電の小林庄一郎元社長が誰の責任にするわけでもなくひたすらお詫びに徹したお話や、事故後に「負の遺産資料館」を開設、事故を報じた記事を信楽焼きで陶板にして後世に伝える等、再発防止に努めたお話が印象的でした。併せて、欧州で進む「再生エネルギー(太陽光・洋上風力)」についても、電源の不安定さや環境に関わる利権等の問題点についてご説明頂きました。

最後に「世界情勢」について。欧州各国のエネルギー施策の背景には常に対ロシアが意識されていること、トランプ政権を人事で紐解くとアジアよりも中東シフトを敷いていること、その他、尖閣問題・北朝鮮問題についても独自の切り口で解説頂きました。

竹田講師からは、時折、敏腕記者ならではの“裏話”“こぼれ話”もご披瀝頂き、参加者が驚きと笑いの渦に包まれる盛況な講演となりました。

大変ご多忙の中、貴重なお話を頂いた竹田様に心から感謝申し上げます。

(H05年経済学部卒 中桐慎二郎)

 

参加者合計50名


2月定例会

日時:平成29年2月21日(火) 19時より

場所:大阪凌霜クラブ セミナールーム

講師:蔭山 秀一氏(関西経済同友会 代表幹事・三井住友銀行 副会長)

演題:「動き出す関西」

今回は、関西経済同友会 代表幹事の蔭山秀一様を講師にお迎えし、今話題の観光インバウンドや万博IRなどのお話を中心に、今後の関西活性化の鍵となる様々なプロジェクトについてお話を頂きました。

まず、観光インバウンドの状況について。2016年大阪の外国人客数は940万人と3年前と比べ約3.6倍、日本全体(2.3倍)を上回る実績。グランフロント大阪やあべのハルカスの開業、USJのハリーポッターといった施設の開業も後押し材料となり、関空の外国人旅客数は過去最高を更新、ホテルの稼働率・客室単価も上昇、電鉄・バス・飲食・レストランにも好影響が出ているとのことでした。

次に関西で計画されているイベント・プロジェクトについて。 まずは、関西ワールドマスターズゲームズ(WMG)。わが国で開催される三大スポーツイベント(2019年ラグビーW杯、2020年東京オリンピックパラリンピック、2021年関西WMG)の最後に行われるアマチュア向け生涯スポーツ国際競技大会で、関西広域連合(含む鳥取・徳島)2府7県が開催地となる予定。WMGを通じ、関西が「するスポーツ」の聖地としての地位を確立できれば、世界中から多くの一般アスリートを関西に呼び込む契機になると期待されているそうです。

万博は、今年5月の閣議了解後正式に立候補し、2018年頃には開催地が決定する予定。強力なライバルとしてパリが既に立候補しているものの、日本は現在のテーマ「人類の健康・長寿への挑戦」を「未来社会をどう生きるか」に変更し、官民一致団結して各国の支持を取り付けていく方針。誘致活動が実現した場合、開催は2025年、入場者規模は3,000万人以上(愛知万博2,200万人)を想定中。

IR(統合型リゾート)は、実施法案成立を前提に2023~24年頃の開業を計画。IR施設の内、カジノは全体面積の数%に過ぎず、残りの90%以上は劇場等エンターテイメント施設・高級ホテル・MICE(*)施設等。カジノの収益で、MICE・エンターテイメント施設を運営していくビジネスモデルで、経済効果7,600億円、雇用の創出9万人が見込まれる。なお、ギャンブル依存症に関しては、シンガポールの成功事例(入場制限・のめり込み防止・治療体制整備等)も参考に、確り対策が打たれる予定とのことでした。

(*)会議(Meeting)、研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会(Exhibition/Event)

なお、万博IR予定地の夢洲は、面積が220ha(中之島3つ分)と広大な空き地で、ゼロベースで街づくりが出来るポテンシャルの高いエリア。蔭山講師は、夢洲を高度インフラのスマートシティや最新技術の実験場とすることで、世界中の企業が集まる最先端技術の集積地を目指してはどうか、と提言されているそうです。

その他にも、①うめきた2期:みどりとイノベーションの融合拠点をコンセプトとしたまちづくり計画、②中之島4丁目:大阪大学と連携した再生医療の拠点整備計画、③なにわ筋線:新大阪から、うめきた・中之島経由、難波・関空にアクセス出来る新路線計画、④広域インフラ整備:リニア新幹線(新大阪延伸2037年)、北陸新幹線(同2040年頃)、大阪湾岸線西伸部(完成予定2038年)、淀川左岸線延伸部(同2032年)、関空・伊丹・神戸空港の共同運営、⑤メンタープログラム:同友会会員による若手起業家向け支援プログラムの開始  等についても、最新情報を交え詳しくご説明を頂きました。

最後に、関空やけいはんな学研都市の成功例を踏まえ、万博IRや各インフラ整備等も、目先の利益ではなく、中長期的な関西の活性化を計画・展望し、取り組んでいくことが、関西を再浮上させる上で非常に重要、とのお話で講演を締めくくられました。

蔭山講師のお話は、関西を元気にする希望に満ち溢れた明るい話題が多く、講演会に参加された方々も熱心にお話に聞き入っておられました。また、講演会終了後、メインホールにて若手参加者による「蔭山講師を囲む会」を実施、大盛況の懇親会となりました。

大変お忙しい中、講演会で貴重なお話を頂いた上、若手との交流の機会も設けて頂きました蔭山様に心から感謝申し上げます。

(H05年経済学部卒 中桐慎二郎)

参加者合計73名


1月定例会・新年交歓会

1月特別例会・新年交歓会

日時:平成29年1月17日(火)18時30分から

場所:大阪凌霜クラブ

恒例の新年交歓会が出席者64名で催されました。来賓の方々は、大学から武田学長、内田副学長、松原企画部長、仲田卒業生課長、凌霜会からは大坪理事長、一木常務理事をお迎えしました。

中桐事務局長の開会宣言に始まり、宮本理事長からの挨拶があり、学長から昨年に引き続き世界ランクトップ100、国内ランク5位を目指す運営を続ける旨力強いお言葉がありました。

昨年4月新任の凌霜会大坪理事長から、「どのようなかたちで大学を支援していくのか」検討し実行する必要があるとの言葉を頂きました。

今年は国会議員も2人出席頂き抱負を頂きました。平成25年法科大学院ご卒業の兵庫1区の盛山正仁氏、平成2年法学部ご卒業の兵庫7区の山田賢司氏の方々です。

凌霜俳句会の会員拡大に向けて昭和39年卒業の新谷壯夫のPR、昭和45年経済学部卒業の辻本健二氏には凌霜会の現状と会員拡大のことが、昭和63年卒業の経営者志方寛氏はお父さんも旧神戸商大との披露もありました。女性では、イラク大使館勤務で現在は弁護士をされている平成3年大石賀美にはイラク大使館勤務のご経験もありアラビア語を織り交ぜて挨拶頂きました。平成20年劇団四季劇団員は発達科学部ですが、ウィキペディアにも載るほどの実力です。

大いに神戸大学卒業したことに誇りと感激した新年会となり、最後は長尾運営委員長の三本締めと神戸大学学歌斉唱でお開きとなりました。

バタバタしましたので、いい写真がありませんが、ご出席の皆さまから「感激した」「大変良かった」とおほめの言葉を頂きました。ありがとうございました。

(S46年経営卒 瀬野鋼太郎)

参加者合計64名


12月特別例会・忘年会兼若手歓迎会

日時:平成28年12月20日(火) 18時30分より

場所:大阪凌霜クラブメインホール

今年も忘年会の季節が来た。出席者50名にて、催されました。

中桐事務局長の開会宣言のあと、西浦副理事長の挨拶、来賓の凌霜会一木常務理事の乾杯の音頭で忘年会は始まった。「若手歓迎会」と銘打っているので、若手も忙しく何時もより30分遅く開始したのが良かった。

12月の忘年会にふさわしく、丸紅合唱団「コールフェリーチェ」に特別参加頂いた。「Xmasソング」が彩を添える。「清しこの夜」「もろびとこぞりて」はピアノの音色によく乗って室内に響く。面白おかしいサンタさんが登場した「赤鼻のトナカイ」「サンタが街にやって来る」面白おかしくは拍手喝采。

今年も来年4月に就職する若人が7名も参加。浅田就職支援センター所長の紹介で各自今後の抱負を述べ頼もしい限りだった。若者に大いに期待できる。

そして、プレゼント抽選会。「若手の会」幹事の落合幸弘さん(H12法)と湯山佐世子さん(H15営)の司会。ボケとツッコミではないが、絶妙のコンビ。豪華景品の数々。

最後は、長尾運営委員長の三々七拍子でおひらきとなった。

この日は出席者の皆さんにお菓子のお土産。年配の方はお孫さんへのクリスマス・プレゼントとなったのではないでしょうか。

(S46年経営卒 瀬野鋼太郎)

参加者合計50名


11月定例会

日時:平成28年11月15日(火) 19時より

場所:大阪凌霜クラブメインホール

講師:黄 磷 氏 (神戸大学大学院経営学研究科教授)

演題:「インバウンド市場のマーケティング」

 

今回は、神戸大学大学院経営学研究科の黄教授をお迎えし、マーケティングという視点からインバウンド市場についてお話頂きました。

日本は、少子高齢化社会が進展する中、今後の成長戦略の重要な柱として、また、地方活性化や地方創生の起爆剤として、訪日外国人観光客の増加に取り組んでおり、2015年度には2000万人弱という過去最高の数字を記録、2016年度も前年をさらに上回る数字が確実となっております。先生によると、訪日外国人数が増加した要因としては、政府がアジア諸国を中心にビザの緩和を進めたこと、円安、LCC(格安航空会社)の拡大等があげられるとのことでした。

今後、政府が掲げる2020年4000万人の目標達成には、中産階級層の人口増加が見込まれるアジア、特に中国からの訪日客数を如何に増やすかがポイントであり、そのためには、日本の企業や地域が如何に連携しインバウンド需要を創造していくか、そして需要創造にとどまらず、より高い価値をどう実現していくかが、大きな課題であるとのお話でした。

まず、インバウンド市場を考える上では、三つの多様性について理解する必要があるそうです。一つ目は「顧客としての多様性」、つまり、海外からの観光客の中でどの顧客をターゲットとするのかということです。例えば、広島県の外国人観光客の7割が白人であることがターゲッティングの効果として挙げられますし、大阪府であれば関空のLCCの乗客(中国人)をターゲットとするといった市場目標の設定がマーケティングの基本となるとのことでした。

二つ目は「主体の多様性」です。インバウンドビジネスには、交通・宿泊・飲食・商業・行政・地域住民等多様な関係者が関わっており、その中でいかにネットワークを形成し、インバウンドビジネスを成功させる仕組みを作り上げるか、ということがインバウンド市場のマーケティングで一番大事なポイントであると強調されておられました。

三つ目は「無形や有形、あるいは経験としての観光サービスの多様性」、単にお土産を売るのではなく、その地域でしか味わえない体験や経験を通じ、顧客に感動・共感頂くことが大事であるとのことでした。

今後もインバウンド市場の持続的な拡大を維持するためには、本格的な潮流として訪日客の地方分散化をさらに推進すること、そして、各観光地域の「魅力づくり」「イメージ形成とブランドづくり」「ネットワークづくり」の視点が大きなポイントとなるとのことです。また、日本版DMO(*)の課題としては、①合意形成、②マーケティングに基づく戦略策定、③関係者のマネジメント を上げておられました。

講演の後半では、インバウンド市場への取組の具体的な成功事例として、有馬温泉(泊食分離・街並み整備)、越前蒔絵時計・熊野筆(伝統工芸)、神戸牛・白い恋人・南部鉄器(地域ブランド)等、私たちにも馴染みのある名前を挙げて、大変わかりやすく、またユーモアも交えて成功のポイントをご説明頂きました。

最後に、インバウンド市場拡大のキーとなる「地方創生」の実現に必要なこととして、若者(新しい発想)、よそ者(外部の力)、ばか者(愚直な推進力)が主役となり、「視点が変われば世界が変わる」という考えでその地域を俯瞰し固有の魅力を見出す努力をするとともに、地域住民と行政が協働し、誇りと情熱をもって地域の魅力づくりに取り組むことが重要、とのお話で講演を締めくくられました。

関西にとっても、インバウンド需要の拡大は非常に大きなテーマであり、講演に参加された方々は熱心にお話に聞き入っておられました。 大変お忙しい中、貴重なお話を頂きました黄先生に心から感謝申し上げます。

 

(*)Destination Management Organization:地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた組織。

参加者合計21名


10月定例会

日時:平成28年10月18日(火) 19時より

場所:大阪凌霜クラブメインホール

講師: 吉井 昌彦氏(神戸大学大学院経済学研究科・教授)

演題:「EUはどこに向かうのか~ギリシャ危機とBREXITから見たEU~」  

今回は、神戸大学大学院経済学研究科の吉井教授をお迎えし、EUのギリシャ危機・BREXITを中心にお話頂きました。

先生はロシア、ウクライナの東欧経済が専門ですが、現在は西欧を含む欧州経済が中心です。特にEUは大きな分野を占めており今回お話頂きました。 EUとは28か国、429万㎢(日本の約11倍、米国の0.47倍)、総人口5億570万人(日本の約4倍、米国の1.6倍)GDPは17兆5121億ドル(日本の3.57倍、米国の1.07倍)です。現在はギリシャ危機、域内経済回復の遅れ、移民・難民問題、ナショナリズムの台頭、ウクライナ/ロシア制裁、イギリスの離脱(BREXIT)等々多くの難問を抱えています。

ギリシャ危機は2009年10月に起ったリーマン危機後に発生。信用不安は南欧(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ)に拡がり、EUの経済回復をより難しくしました。ようやくギリシャ支援(北から南への金融支援)という形でおさまりました。マーストリスト条約に則り、金融・財政システムとの整合性に時間を取り、曲がりなりにも、今は落ち着きを見せています。

ギリシャ危機後の難題は2016.6.23のBREXITの動向です。英国の国民投票では大方の予想を裏切って離脱という結果になりポンド・株が売られました。

英国が1973年EUに加盟した時から、大陸とは距離を置き、マーストリヒト条約(1993年)を拒否し、シェンゲン協定に不参加のため、次のような不満やら問題点がありました。

・ EUへの分担金は、ドイツ>フランス>イタリア>英国です。分担金は農業分野が中心で、英国は大陸のように農業分野は小さく見返りが少ない。

・ 英国から大陸へはパスポートコントロールがある。 ・ ユーロでなく、ポンドを使っている。(シェンゲン条約)

・ ユーロクラット(官僚)がいろんな細かいモノゴトまで決める。メリットがなく何とかしろ‼

・ EUに残ると難民のための税金がかかる。

・ 域内移民と域外移民の問題もある。(ポーランドからの移民が最近は年に30-40万人)最近は域外より域内移民が予定より多く増えすぎた。

域外移民は第弐次大戦後の経済成長に伴うトルコ、北アフリカからの難民、1990年代のユーゴ内戦、2000年代の「アラブの春」による北アフリカ、そして2010年代から続くシリアからの難民問題等々連綿と続いてきました。

だが一度離脱が決められたら次の問題が浮上します。

・ 英国の国民投票は賛否を問うただけであり残留派が多数の国会での議決をどうするか。

・ スコットランドがEU残留を求めても、英国議会での議決を経なければならず、又、バスク地方を抱えているスペインのようにスコットランド単独でのEU加盟は、全加盟国の賛成が必要でありそう簡単には進まない可能性が高い。

・ 英国が共通市場に残らない場合は、関税率、をどうするのか。

・ 日本から見て、自動車産業の場合、トヨタは英国にも大陸にも工場を持っており、部品の輸入、完成品の輸出にたいする関税率をどうするかという問題も解決する必要がある。日立の鉄道列車製造も同じような問題を抱えてしまった。(最も日本からは英国にこんなまずいことは避けてくれと要望書は提出しているが…)

新しいメイ首相のもと、「離脱通告」から2年以内に決めなければならないことが山積しているのが現状です。 歴史的にはEUは数々の問題を抱えながら、危機をバネに克服して深化してきましたが、ドイツの一人勝ちへの懸念が残ると同時にドイツ単独で他国を救済できるのでしょうか。仏・伊などが経済回復できるのでしょうか等々制度疲労により、解体・崩壊の危機にさらされています。なかなか、難しいEUの現状と未来についてお話頂きました。

大変お忙しい中、貴重なお話をいただきました吉井先生に心から感謝申し上げます。 (昭和46年経営学部卒 瀬野鋼太郎)

出席者合計33名

ビアパーティー2016・留学生を励ます会

日時:2016年8月4日(木)午後6時30分~午後8時30分

場所:大阪凌霜クラブ・メインホール

 

本年も恒例のビアパーティが一般社団法人大阪凌霜クラブ/神戸大学学友会大阪クラブ、一般社団法人凌霜会大阪支部の共催で盛大に開催されました。留学生11か国・20名をむかえ、総勢65名も集まりました。

冒頭、田中運営委員長の開催の辞があり、引き続き宮本理事長が挨拶致しました。その後来賓の方々の紹介に続き、平松凌霜会副理事長のご発声により全員で乾杯を致しました。 神戸大学への海外からの留学生は、85か国1,200人にも及び、今回は11か国20名の方々を招待しました。始めに真夏の夜のジャズと銘打ち、竹田さんの女性ボーカルで始まりました。

続いて、若手の会の司会でいろんな国の方々がお国自慢、何を勉強しているか、人生を変えた出来事等についてスピーチ。皆さん巧みな日本語を披露。明治・大正時代の歴史を勉強していることや谷崎潤一郎を愛読している話、海に囲まれている国でなく、山に囲まれている国の話、火山・地震大国の日本に来て火山・地震のことを勉強しに来た話、教育を通じての生産性向上はどうするべきかの話、教科書で習った日本と祖母祖父の時代の日本の話に語られる日本が食い違い確認に来たといった話、等々、一人一人が自覚して日本に来て勉強しようと言う意欲と姿勢が感じられました。

続いてプレゼント抽選会が始まると、留学生には始めは当らなかったが当りだした。フランスの留学生にスペイン産ワインも当るという面白さも加わりました。 最後は次期の長尾運営委員長と中桐事務局長の閉会の辞に移り、留学生もはじめてだと言う三・三・七拍子を披露。そして最後は全員で三・三・七拍子でお開きとなりました。 (昭和46年経営学部卒 瀬野鋼太郎)


出席者合計65名

7月定例会

日時:平成28年7月19日(火) 19時より

場所:大阪凌霜クラブセミナールーム

講師:藤原 規洋氏(元毎日新聞論説委員)

演題:「文系記者が見た再生医療学会〜iPS細胞の可能性」

 

今回は、元毎日新聞論説委員である藤原規洋氏をお迎えし、再生医療、特にiPS細胞の未来についてお話をいただきました。

氏は今年3月に大阪で開催された再生医療学会の取材から、敢えて専門家ではなく「文系記者」の視点から、iPS細胞についてわかりやすくお話をしてくださいました。

人間の体には1g中に10億個も細胞があり、60kgの人だとその数は60兆個にもなるそうです。これらは、もとは1つの受精卵で、細胞分裂を繰り返し約260種もの細胞になり体を形作っています。この、1つの受精卵がなぜ260種もの細胞になれるのか?という発想が、iPS細胞につながっていくのだとお話されました。受精卵の時点ではどんな細胞にもなり得ますが、細胞分裂によって細胞が性格づけをされ、一度性格づけをされた細胞は元には戻らないというのがこれまでの常識でした。しかし1981年、受精卵からつくられるES細胞はこの常識を覆し、初期化することが発見されたのです。当初はマウスでの実証でしたが、1987年にはクローン羊のドリーが誕生し、哺乳類でも実証されました。これが、iPS細胞発見の前段階です。しかし、ES細胞は不妊治療の過程で使用されなかった受精卵を使って作られていたため、倫理的な問題があるとされ、実験に厳しい規制があり、なかなか研究が進まなかったそうです。

ES細胞は胚性幹細胞、iPS細胞は人工多能性幹細胞のことで、幹細胞は元々人間の体の中にもあり、骨や皮膚が自己再生する際に使われます。この幹細胞を人体から取り、シート状にして使う治療方法はiPS細胞発見以前からもあったそうです。

再生医療は以前から存在したにもかかわらず、なぜiPS細胞はこんなにも期待を集めるのでしょうか?氏はその理由として3点をあげられました。まず、iPS細胞は皮膚の細胞に4種類の遺伝子を入れることで初期化を行うため、ES細胞のような倫理的な問題がない事。2点目に、ES細胞は他人の受精卵から作りますが、iPS細胞は自分の細胞から作るため拒絶反応を起こさない事。最後に、たくさんの数を作る事ができるため、研究が進みやすく技術開発も早い事です。当初、iPS細胞はがん化する事がネックだと言われていましたが、既に研究が進み、がん化の不安はほぼ全てクリアされているそうです。また、狙った種類の細胞に分化させる技術も日々進化しており、iPS細胞への期待・希望はどんどん大きくなっています。

iPS細胞の活用として最も研究が進んでいるのは再生医療です。2014年には理科学研究所がiPS細胞を使った目の治療の臨床試験を行い、安全性が確認されました。他にも、創薬、難病の原因究明も活用方法として期待されています。特に、ALSや筋ジストロフィー、ダウン症などの神経細胞が原因となる難病について、患者から作ったiPS細胞由来の神経細胞の研究によるメカニズムの解明に、大きな期待が寄せられているそうです。更に、メカニズムがわかれば、薬の開発にもつながります。実際、パーキンソン病や脊髄損傷、がん等いくつかの病気に対して、iPS細胞を活用した治療方法が臨床試験や治験の段階にまで進んでいるそうです。

これだけ進んでいるiPS細胞の研究ですが、課題もあると氏は言います。それは、高額である事と時間がかかる事だそうです。これに対して、既に京大のiPS細胞研究所は「iPSバンク」の設立を進めているそうです。様々な人から作ったiPS細胞を冷凍保存しておくため、自分のiPS細胞ではありませんが、白血球の型によっては拒絶反応が起こりにくい型がある事がわかっており、50通りの型があれば日本人の9割に対応できると言います。これにより、費用も時間も抑える事ができるという事です。  2014年に発売された小野薬品工業のオプジーボというがん治療薬は、抗がん剤ではなく、免疫力を高めるという画期的な薬ですが、1年で3500万円もの費用がかかる大変高額な薬であり、認可はされているものの保険適用にはなっていません。こうした高額薬が保険適用になると、国民皆保険制度が崩壊するリスクもあります。iPS細胞も同じような課題を抱えていますが、今後の研究によってクリアされていく期待もあります。

他にも、骨髄の中から「ミューズ細胞」というがん化しない多能性の細胞が発見されたり、皮膚細胞から直接他の必要な細胞に変化させるダイレクト・リプログラミングの研究も進むなど、iPS細胞はそれ自体の発見はもちろん、その他の研究にも大きな影響を与えた点でも、その貢献は大きいとしてお話を締めくくられました。

iPS細胞の発見から10年の間にこんなにも研究が進み、iPS細胞を使った再生医療の実現がそう遠い話ではないという事に、大きな希望を感じることができました。

大変お忙しい中、貴重なお話をいただきました藤原様に心から感謝申し上げます。


出席者合計17名

6月定例会

日時 :

2016年6月21日(火)19時より

場所 :

大阪凌霜クラブメインホール

講師 :

梶谷 懐氏(神戸大学大学院経済学研究科・教授)

演題 :

「中国経済と人民元のゆくえ」

  

今回は、神戸大学大学院経済学研究科の梶谷教授をお迎えし、最近の世界経済における大きな関心事である中国経済についてお話をいただきました。

中国では2014年頃のバブル崩壊とともに、余剰資金が不動産から株式へ流れ、2015年6月12日に上海総合指数が最高値をつけたものの、その後、株価は急落し、中国政府が露骨な市場介入を進め、一旦持ち直すものの再び下落。リーマンショック時にも同様な株価下落はあったが、当時に比べ中国が世界経済に与える影響が大きくなっているため、今回は世界同時株安を引き起こしたとのお話でした。

中国は2005年にドルペッグ制を採り、その後は通貨バスケットへのペッグに切り替えたものの、実質的にはやはりドルの影響が大きく、中国人民銀行は人民元の対ドルレート基準値を切り下げました。経済の落ち込みを支えることが狙いでしたが、逆に元売りを招く結果となってしまいました。一方で、切り下げにより、これまで2%程あった基準値とスポットレートの乖離が解消されたため、元々、人民元のSDR構成通貨採用に向けてこの乖離を是正するよう勧告していたIMFからは一定の評価をされたそうです。しかし、先物レートとはまだ乖離があり、市場関係者はまだ元が下がると見ているとの事でした。

更に、一般的な認識はあまりないが、と前置きされたうえで、ここ数年の中国経済はデフレ基調にあるとお話されました。氏によると、政府が市場に投入する資金によって一時的にバブルが起きているだけという状況だったそうです。中国の生産者価格指数は2014年からマイナス水準で、特に製造業は利益を出しづらい状況にあり、更に、2015年から物価下落が加速、不動産価格も依然低迷し、投資の収益性下落により銀行融資も伸び悩むなど、企業業績の悪化や雇用悪化が進み、デフレスパイラルに近い状況がここ数年続いていたそうです。現在の中国経済はデット・デフレーションの条件をほぼ備えており、株安はその結果であるとのお話でした。この背景として、リーマンショック後の「四兆元規模の景気対策」、公共事業や国有企業による投資、特に経済効率の悪い内陸部への過剰投資をあげられました。デフレにより金利負担が過大になり、デット・デフレーションが発生したのです。

本来であれば、日本同様に金融緩政策を採るべきですが、中国では、市場に大きな元売り圧力が働いている下でも、人民銀行は対ドルレートの維持のため、大規模な元買い介入を繰り返してきました。これは、市場を引き締めることになり、他の金融緩和政策の効果を相殺し、経済成長を妨げに繋がるものとして「ドルの足枷」と解説されました。中国は、こうした状況から脱するため、人民元の国際化(SDR構成通貨に採用)を目指しているとの事でした。

そして、国際通貨の資格として、経済・貿易の規模と同時に、①為替レートの安定性やインフレ率、②金融システムの成熟度、③国内における制度的枠組みの強固さ、政治の安定性などが要求されるとして、クロスボーダー決済の拡大は一定の成果をあげているものの、経済・貿易の規模以外では中国はこの基準に達していないというのが大方の見方だとのお話でした。また中国は、「一帯一路構想」という国内資本による周辺諸国へのインフラ投資も目指していますが、海外投資を人民元建てで行うには、「不整合な三角形の問題」が発生するともお話されました。これは、①積極的な対外インフラ資本投資(一帯一路)、②人民元の国際化、③国内の柔軟な金融制度の実施という3つの政策目標のうち、同時には2つしか実現されないのではないか?という問題だそうです。

この問題に対する対策としては、通貨バスケットへのペッグを明確にして、ドルとの連動を弱めることが必要だとお話されました。実際、2015年12月から公表した通貨バスケットの構成比率によると、ドルの構成比率は26.4%にまで低く抑えられているそうです。一方、人民元のドルへの連動はそこまで低くはなっておらず、公表されている数字が本当なのか、市場には中国政府への不信感があるとの事でした。人民元が本当に国際化を実現し、これらの問題を解決するためには、市場からの信頼は不可欠であり、きちんと情報を出して市場と対話する能力がなければ信頼は得られないとして、講話を締められました。

大学でも中国経済を学ばれる学生が少ないそうですが、お話にもあったように、わが国はもちろん世界経済において中国が与える影響は無視できないものになっている中、中国経済への理解を進めることは大変重要であると感じました。  大変お忙しい中、貴重なお話をいただきました梶谷先生に心から感謝申し上げます。

出席者合計35名

5月定例会

日時 :

2016年5月17日(火)19時より

場所 :

大阪凌霜クラブメインホール

講師 :

蓑原 俊洋氏(神戸大学大学院法学研究科 教授)

演題 :

「2016年米大統領選挙の勝者は?」

 

今回は、神戸大学大学院法学研究科の簑原教授をお迎えし、日本でも連日多くの報道で盛り上がっている米大統領選挙についてお話をいただきました。

冒頭に幾つかの米大統領選挙にまつわる数字をクイズ形式で出題され、その中でも大統領選挙で勝利するために必要な代議員数「270」を重要な数字として紹介されました。続いて、「米大統領選は世界一複雑な国政選挙」である理由が、複数のコロニーから成る合衆国として建国された歴史に遡るというお話がありました。小さなコロニーにも政治力を持たせるため間接選挙制がとられており、州による人口の格差が非常に大きいせいで、日本でも問題になっている1票の格差が数百倍にもなってしまい、そのため、大統領選挙では大きな州よりも、どの政党が支持されるかわからない比較的小さな州「SWING STATES(揺れる州)」が重要になるそうです。更に、地方分権が進んでおり各州で行われる予備選挙のルールが統一されていないこと、選挙までに公開討論会が何度も開かれるため、当選するには討論力が大変重要であることなど、同じ国政選挙でも日本と大きく違う点に驚きました。

今回の大統領選では、当選すれば初のユダヤ教大統領となる民主党のサンダース、政治経験もなく過激な発言を繰り返す共和党のトランプが支持を集める現象が起こっています。その理由として、リーマンショックで最もダメージを受けたブルーカラーの現状への強い不満が、本流でないアウトサイダーの支持に繋がったとのお話があり、改めてリーマンショックがアメリカに与えた影響の大きさを感じました。

また、日本と異なる選挙の争点として、社会問題(宗教、中絶、銃規制、LGBT)、貿易問題、税制制度、外交政策があり、保守的な共和党とリベラルな民主党がそれぞれ異なった立場をとっている中、民主党に追い風が吹いているとお話されました。その理由として、もはやアメリカが白人国家でなく多様な民族が大きな政治力を持つようになったこと、都市部への人口集中により都市部とそれ以外の対立構造が出来ていること、拡大しない経済のパイにより現状への不満が募っていることを挙げられました。

ここで、オバマ大統領の功績を振り返り、広島訪問での発言がポイントになるとされながら、それなりに成果を挙げたと評価されました。一方で、これまで世界において特別な国であったアメリカを弱くした大統領であり、そのせいで「make America great again」と主張するトランプが支持されているのだろうとの事でした。

そしていよいよ、2016年米大統領選挙における勝者の行方についてのお話となりました。現在、民主党候補はヒラリー・クリントン、共和党候補はドナルド・トランプでほぼ決着しそうになっていますが、この二人の戦いは、史上最も人気のない候補同士の戦いだそうです。しかし、トランプで選挙に勝てるか、党がまとまるかに不安を持つ共和党が第三の候補者を出してくる可能性や、高額な報酬を受け取ったクリントンへの国民からの批判がどう影響するかなど、まだ目が離せない様子です。

最後に、氏はクリントンが勝利すると予想され、これによりオバマ政策が踏襲されることは日本にとっても良いことだとお話されました。トランプは、アジア・日本に関心がなく、基地問題もアメリカにとって損か得かで判断するため、日米の安全保障問題についてもよく言えば日本の自主性を試す機会を与えるが、そうなると日本にとっては国防費の拡大という問題を生むこと、安全保障面でも中国に対する防波堤となるであろうTPPもトランプは潰すだろうとのご指摘でした。

大国であるアメリカの大統領選挙とはいえ、これまでよそ事と思っていましたが、次期大統領が誰に決まるかによって日本が置かれる立場も大きく変わる事を感じさせられました。ご講話を拝聴したことで、選挙制度や候補者に関しての理解も深められ、11月の大統領選挙まで目が離せません。 大変お忙しい中、貴重なお話をいただきました簑原先生に、心より感謝申しあげます。

出席者合計35名

4月定例会

日時 :

2016年4月19日(火)19時より

場所 :

大阪凌霜クラブメインホール

講師 :

小野 博郷氏(弁護士)

演題 :

「役に立つコンプライアンス講座」

 

今回は、弁護士の小野先生をお迎えし、昨今、企業にとって非常に重要なテーマとなっているコンプライアンスについてお話をいただきました。  

冒頭に、最近メディアを賑わせているタレントやスポーツ選手の事例を挙げられながら、コンプライアンスは企業だけの問題ではなく、現在は個人にもコンプライアンスが要求される時代であると述べられました。

そして、コンプライアンスとは形式的に法令を順守すればよいものではなく、実質的に、つまり法令等の背景にある精神や価値観までも順守する活動であり、この点を誤解しなければコンプライアンス違反は起こらないはずだとお話されました。東芝は、自ら日本一コンプライアンスが進んだ会社と言う程に、制度面を完備していたにも関わらず、経営層がこの精神を理解していなかったため、不適切会計という大きな問題が生じた、まさに形式的法令順守はされていたが、実質的法令順守がされていなかった例として紹介されました。

氏が弁護士になられた昭和50年代後半には、コンプライアンスという言葉もなく、企業においても女性に寿退社をするかアンケートをしたり、忘年会で飲酒を強要したりという、セクハラやパワハラにあたるような行為も平気で行われていた時代であったと振り返られました。では、なぜコンプライアンスという問題が大きく捉えられるようになったのか?これについて氏は、2001年にアメリカで起こったエンロン事件が発端であるとお話されました。エンロンはアメリカで急成長した会社でしたが、粉飾決算が発覚。株価が急落した結果破産し、投資家や取引先、従業員など多くの関係者が被害を受けました。それまで、資本主義において利益を得る事は「正」とされてきましたが、この事件をきっかけに行きすぎた利益至上主義への疑問が生じ、コンプライアンスを守ったうえで利益を極大化するべきとの考え方が広まったとのお話でした。その当時、日本でも企業の不祥事が続いていた時期であり、日本においてもコンプライアンスの観念が大事だと言われるようになったそうです。

一方、コンプライアンスは費用がかかり利益と相反するものと捉えられがちですが、氏は、コンプライアンスやCSRは企業の利益と結びつくものであるとお話されました。コンプライアンス違反があると、大企業であっても倒産や上場廃止、業績悪化に陥ります。そのため欧米では、投資家はCSRを果たす企業が投資先として安定的という考えをしたり、取引先にも高いCSRの基準を要求したりするそうです。つまり、コンプライアンスとは企業が評価される大きなポイントになっており、コンプライアンスは企業が持続的に発展するために意義のある活動であるとのお話でした。

また、コンプライアンス違反発生の要因として、損失隠蔽、過度の利益重視、業界慣行、時代錯誤を挙げられました。業界慣行の例では、ホテルのエビ偽装の問題が記憶に新しく、特に悪意がなくてもコンプライアンス違反が生じる危険を感じました。一方で、違反は過失でも生じてしまう中、重要なのは違反発生後の危機管理であるとお話されました。例として挙げられた雪印乳業集団食中毒事件では、即時に情報開示をしなかった事が被害の拡大につながり、その後の調査結果が警察に覆されたり、謝罪に誠意がなかったりと、消費者の不信感を拡大させる不適切な対応であったそうです。さらに、コンプライアンスの担い手として、取締役が最も重要であるものの、一般社員にも実質的な法令順守の意識が必要であり、管理職は難しい立場であるが一般社員への指導と上層部への説明を果たさなければならないという、会社全体でコンプライアンスを守っていくことが大切であるというお話でした。

最後に、コンプライアンスを守ることは、企業活動を阻害するものではなく、企業を強化するための活動だとまとめられました。 企業で働く身として、コンプライアンスは事業活動に直結しないと考えていましたが、お話を通して「コンプライアンスを守らなければ企業の持続的発展はない」というお言葉がとてもよく理解でき、企業にとって大変重要な観念であるということを深く感じさせられました。タイトルどおり、とても役立つコンプライアンスのお話をいただきました小野先生に、心より感謝申しあげます。

出席者合計20名

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