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6月定例会

日時 :2017年6月20日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :地主敏樹氏(神戸大学大学院経済学研究科・教授)

演題 :「トランプ政権の経済政策」

今月は神戸大学の地主先生に講演をお願いしました。先生はアメリカ経済論・金融論がご専門です。トランプ政権下の経済政策を中心に語って頂きました。

【大統領選挙の振り返り】

直前まではヒラリーが有利という予想でしたが、トランプが勝利をするという番狂わせ。(中西部の)ラストベルト・(アパラチア山脈をかかえる)炭鉱地帯を丹念に回ったのが勝利につながったのは明らかです。(シナリオはクシュナーが書いたと言われました。)

ヒラリーは、夫ともども金融業界と密接につながり、自由貿易派と見られており、本来の労働者階級の民主党とは肌合いが違います。これを逆手に取り保護主義・反ウォールストリート・反移民を、ラストベルト・炭鉱地帯の労働者向けに訴え逆転勝利。トランプは民主党予備選のサンダースの強み、ヒラリーの弱みを突いたとのご指摘は当たっていると思いました。

【選挙公約・最初の100日】

政権が動きだし数か月も経過すると、ウォールストリートのゴールドマン・サックス経営陣から多数登用しました。反ウォールストリートはどこにいったのかと思いました。

最初の100日間、大統領令の多発が目立ちました。公約の「移民制限策」としてイスラム諸国7か国からの「入国制限」を訴えましたが、反対の声とデモが起こり、地裁・高裁レベルの判決では違憲が示されました(その後、最高裁は条件付きで10月までの執行を承認)。一方不法移民の摘発は増えました。

安部首相・習主席との会談は柔軟路線を演じました。しかし、準閣僚の人事停滞で、日米経済対話は未だ実質的には進んでいません。

オバマケアの修正案が5月に下院を通過し上院で審議中とのことでした。下院で否決、全て終ったと思いましたが違っていました。

【選挙公約・経済政策は】

選挙公約「アメリカを再び偉大な国にする」(メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン)を実現する経済政策として「関税引上げ」「広範な減税」「金融・環境規制緩和」「オバマケア撤廃」「インフラ整備」を掲げました。経済成長率を上げ、雇用増加で「アメリカ ファースト」を実現しようという内容です。

これらは熱狂的な支持者であるラストベルト・炭鉱地帯の労働者向けの強烈なアッピールであります。オバマ大統領時代の8年間は理想ばかりが先走り、何も実現できなかった大統領と言われています。経済政策は「金融規制法」、「オバマケア」、「バリ協定締結」等で、直接雇用・賃金に関わるものではありません。

対して、トランプの掲げた「関税引上げ」「減税」「金融環境規制緩和」は経済成長につながり雇用促進につながりよりアピールしたのでしょうか。

1980年代から中間層の没落が静かに進んでいるとのご指摘でした。「保護貿易」推進するために、TPP離脱、2国間貿易赤字重視、NAFTA再交渉するとのことです。税制改革の中核は減税と簡素化であり、法人課税の仕向け地主義への転換ですが、その一環として「蓄積された過去の海外所得に対して低率課税」で還流させて「インフラ整備」に投入するのが現実的な案だと思いました。しかし「減税」で大きな難題は連邦税制に対する影響です。トランプ税制が実現すると、GDPに対する負債比率が上昇、10年後には130%になるとの調査機関の予測もあり、議会を説得できるのかと感じました。

パリ協定からの離脱は、選挙公約であり、石炭産業の雇用確保、エネルギーの自給化と主張していますが、先進各国から大批判を浴びました。

このようにトランプ大統領の政策は、政治・外交・社会・経済と幅広い問題を提起しましたが、一方で、世界中でアメリカが一番景気がよく、企業業績もよく株式市場も堅調であることを考えれば、果たしてトランプの経済政策はどこまで議会を通過するのかと思いました。

【結び】

「オバマケア修正案」「金融規制緩和」が下院を通過し、経済政策も動き出しました。無理を言っているようだが、正当な部分もあるとまとめて頂きました。

マスコミとの舌戦、選挙戦のヒラリーとの舌戦がめだちますが、次々と問題提起をしてくれた大統領であると思いました。取分け経済政策はそうです。

しかし、コミ―FBI長官解任でロシアゲートに火が付き、大統領弾劾の可能性はありと見ました。又、トランプフィーバーも治まり、大統領がいてもいなくても経済は低成長ながら成長し、失業率も現在の4.5%程度を維持し、インフレにもならずと見立ては如何でしょうか。

ご講演終了後も、格差社会、金融政策の行方他質問が相次ぎました。問題が大きいだけ焦点ボケするも活気のある講演会となりました。地主先生ありがとうございました。       

文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計47名


5月定例会

日時 :2017年5月16日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :簑原俊洋氏(神戸大学大学院法学研究科・教授)

演題 :「トランプ大統領就任100日経過後の総括」

 

昨年の5月に続く簑原先生のご講演となりました。「トランプ大統領」の100日はどうなったかという誰もが興味をひく演題でした。 前回のご講演は、不人気な大統領選挙だが、共和党ではトランプが、民主党ではクリントンが候補として選出されるだろう。だか、その時点ではわずかにクリントンが有利であるとの内容でした。今回は、トランプが勝利し、世界をアッと驚かせて大統領に就任してから蜜月期の100日間を経てのこれまでの成果や政権の今後の行方についてご講演頂きました。

昨年11月の選挙で浮き彫りになったのは、アメリカという国家の分断がより深刻になったとのご指摘でした。我々は、自由を標榜する国アメリカは、リーマンショック後に著しい回復を遂げたと思っていましたが、選挙後に見て取れる姿は、その裏に深刻な実体があるとの指摘されました。

① 3100余りの選挙区の内、両党の間で一桁台の開きのあるのはわずかか300余りに過ぎない。これはほとんどの選挙区ではいずれかの候補が圧勝した事実を示している。

② 2016年の選挙では、大統領選挙人選挙戦で勝利した政党が上院選も全てを制した。これは米史上、初めてのことである。

③ トランプの支持率は現在42%で、一度も50%を超えたことがない。ただ、共和党支持者に限定すると彼の時事率は87%と極めて。しかも、彼に投票した有権者の間では96%という驚異的な支持率を維持している。

④ ゴーサッチ最高裁判事の任命に当っては、連邦上院の共和党は禁じ手の「核オプション」を行使してルール改正を強行したが、これが後々にアメリカの分断を深めていく効果を増長させる。

⑤ アメリカ大統領選挙は間接選挙であり、一般投票で勝利した候補が敗北する捻れ減少は過去に4回ある。今回は2000年のブッシュ対ゴアの逆転以来だ。少数により選ばれた大統領だが、負けた候補が約300万票も多く獲得したのは米史上にて最も多い数字である。

⑥ 連邦議会における共和党の議席は、上院は52で下院は241である。これは上院における共和党の支配が盤石ではないことを示す。

これら数字が示唆するのは、トランプ政権は今後「綱引き」と「綱渡り」をうまくマネージしなければならないという事実です。つまり、トランプ大統領は強い指導力と鋭いバランス感覚が求められます。しかし、就任演説には、スローガンはあるが共和党の理念は欠如。自らを支えてくれる政治基盤もない。それゆえ、頼れるのは娘婿のクシュナーと娘のイバンカだけである。こうした結果、うまく綱渡りをするため、今後の政策をかつての帝政ローマの公邸と同様に「パン」と「サーカス」を駆使したものとなろう。

目下の関心は、アメリカの対北朝鮮政策がどうなるかにあります。「戦略的忍耐」政策は終わったが、それに取って代わる政策がまだ見えない。ただ、トランプは「弱い無防備なアメリカ」を看過できるはずがなく、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの開発・配備に成功したら、アメリカによる予防的先制攻撃の可能性も排除できない。その場合、韓国や日本にも被害が及ぶかもしれないが、トランプの中ではアメリカ第一であり、隣国に対する配慮の優先順位は低いと考えるのが妥当だろう。くわえて、北朝鮮への攻撃は21世紀の「サーカス」の効果もあり、世論をかく乱させ、自分への捜査に対する関心を避けるためには一つの有効な手段となる。忘れてならないのは、核ミサイルの発射大統領のみの判断でできるという事実である。

さて、ご講演の最後にコミ―連邦捜査局(FBI)長官の解任問題にも触れられました。長官解任は新たな火種となり、「ロシアゲート」という形でアメリカを大きく揺らすことになるのではと締めくくって講演は終了しました。 大変面白くも有意義な講演だったと思います。 「ロシアゲート」事件は始まったばかりですが、お話のように、ホワイトハウス人材の枯渇とゴタゴタ、足の引っ張り合い、連邦議会対策もままならずとなれば、「弾劾裁判」が始まり、大統領解任というシナリオもありだと思いました。しかし、その前にペンスさんに禅譲という可能性もあるかなと思いました。

文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計36名

4月定例会

日時 :2017年4月21日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :巽 好幸氏

演題 :地震・火山大国日本に暮らす覚悟

 

今回は、神戸大学海洋底探査センター・センター長の巽好幸先生にお願いしました。先生はマグマ学のご専門家です。マグマ学と言われてもピンときませんが、先生が殆ど独自に切り開いてきた学問です。

始めに寺田虎彦の有名なことば「天災は忘れた頃にやって来る」から始まりました。

日本は4枚のプレートに覆われており火山噴火・地震が多い。しかし、世界を見渡せば、プレートが何枚も重なり合っている地域は他にも多い。最古の太平洋プレートは古いため重く冷えたプレートが年10cmという高速で沈み込み、最も新しいプレートであるフィリピン海プレートは、若く軽く温かいプレートが数cmの低角で沈み込む。プレートの沈み込みの様式が違うので地震が頻発するとのことです。

ところで、地震と言えば、話題になるのが地震予知。今までいろいろ議論されてきましたが、現状での予知は不可能とのご意見です。例えば1995.1.17の「阪神淡路大震災」の前日の地震の発生の確率は約1%でした。ところが、翌日に地震が起きました。要は日本列島では地震はどこで起こっても不思議ではありませんとのこと。安易な予測を信ずるべきではないとのことです。首都圏直下型地震でも南海トラフ地震でも30年間の発生確率は70%でずが、この確率はロシアン・ルーレットのように日々高くなって行きます。(地震の確率は1%とか、何千年に1回とマスコミと言っても安易に理解すべきではないと戒めていました。)

一方で、火山・地震の恩恵を受けるのが「和食」とのことです。日本列島は山国であり、雨が降っても急な斜面を流れます。流れが速くマグネシウム・カルシウム分が少なくなり軟水となります。対してヨーロッパは平地が多く雨も流れが緩やかになり、マグネシウム・カルシウム分が多く硬水となります。日本では昆布・鰹節と軟水が、おでん・和食の味を引立たせ「うま味」がかかせません。うまい日本酒と料理こそは火山の恩恵であるとのことです。

平成28年の学長を囲む会で、武田学長は今年度の目玉は、「鬼界カルデラ深海底探査」と語っていました。巽先生の研究に寄れば、過去、日本の12万年間にカルデラ噴火は10回あったとのことです。鬼界カルデラ噴火は、今から7,300年ほど前に起こったマグマが噴き出す大噴火。先生はこの「カルデラ型大噴火」は、御嶽山・桜島の噴火とは全く違ったメカニズムとのことです。 鹿児島県の南の海域に鬼界カルデラがあり、大きさは21km×17kmというから驚きですが、7,300年前の大噴火で九州の縄文時代人は死滅し、文明は壊滅したとのことは更に驚きでした。1万2千年に1回とは単純に周期に直すと1.2万年~1.3万年ですが、先の「阪神淡路大震災」の前日の地震の起こる確率の1%と同じだとのことです。詳しくはボアソン分布とワイブル関数で分析できるとのことですが、文系の我々はチンプンカンプン。 要は、1.2万年に1度と言っても、阪神淡路大震災の前日の地震の確率と同じと思えという主旨とのことです。火山灰は40kmの高さまであがり、火山灰は関西地方では30cm、東北地方にも及びました。「アカホヤ火山灰」として日本列島に痕跡をします。こんな「巨大カルデラ噴火」が起こると、2時間で700万人が死亡、1日で4,000万人が死亡、木造家屋は火災と噴石で全壊との恐ろしい予測。火山灰は本州全域を覆い、1億人がインフラ喪失で食べるものもなく生活できなくなる大災害となるとの予測です。  

だが、1万年に1回の大噴火だ、100年に1回の大地震だと聞くと我々は妙に安心する。官僚の方々との予算折衝でも、単年度決算を前提にする官僚の方々は余り聞く耳を持たない。だが、予測される被害を前提にして我々はどうすべきか真剣に取り組むべきであるとのご意見でした。原発事故は起こさない、起こらないと言いながら、起こった原発事故を思い出しました。「鬼界カルデラ」の近くには川内原発があり、大丈夫という依頼心・安心感は常に戒めるべきだと感じた次第です。

 文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計29名


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