定例会報告

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10月定例会

日時:平成29年10月17日(火) 19時より

場所:大阪凌霜クラブクラブメインホール 

講師:内種 岳詞氏(神戸大学経済経営研究所・特命講師)

演題:「社会科学における人工知能とビッグデータ〜計算社会科学のさらなる100年を目指して」

10月は経済経営研究所の若手、内種先生にお願いしました。内種先生は、2016年10月、経済経営研究所に赴任し、計算社会科学の研究を始められました。阪大工学部のご出身で、コンピューターと伴に発展してきた「情報科学」という分野の研究がご専門とのことです。ポートアイランドの理化学研究所でスーパーコンピータ―「京」向けのソフトウェア開発を行っていたとのことです。計算社会科学でもビッグデータ分析や大規模シミュレーションを実施する必要から、「京」コンピューターを扱える先生として経済経営研究所にきて頂いたとのことです。「京」で扱っているのは、量子力学、医療、ものづくり、気象学、天文学での利用があげられますが、ここ2,3年はビッグデータや人工知能の研究・開発が盛んにおこなわれているとのことです。  

「京」コンピューターは、人間なら一生掛ってもできない「1京」回の計算をたった1秒間で実行します。神戸大学では文理融合を掲げていますが、社会科学とコンピータ―の融合によって、どんな未来が見えて来るのでしょうか、今後の大きなテーマとなります。

人工知能の歴史は計算機能力と扱えるデータとに下支えされてきました。

① コンピューターの利用は1950年代から始まりました。人間がやってきたことをコンピューターにやらせる。機械学習と言われている弱い人工知能が開発され、どんなものが売れるか、どんなものが利用されているか等を計算し将来予測をしていました。

② 1980年代からは、ニューラルネットワーク(人工神経回路網)が順次取入れられるようになりました。定量化された大量のデータからルールを学習する手法です。近年注目されているデープラーニング(深層学習)の基本的な技術は当時開発されました。デープラーニングの代表的な例はアルファ碁です。囲碁の膨大な棋譜を覚えさせ、ニューラルネットワーク(人工神経回路網)で入出力させ、プロ棋士の手を57%の精度で予測することが出来ます。コンピューター同士が対戦して経験を積み、人間がやってきた以上の人工知能を持ちました。この成果の裏には、計算機能力の指数的な向上とデータを利活用する技術の進歩がありました。

③ 同じデープラーニングでも、猫・車の認識は難しいものです。より沢山の画像データをコンピューターに与えることが必要な上、データを処理するアルゴリズムと計算機能力とが同時に利用できて始めて可能になりました。その成果として、画像から顔を高確率で自動的に認識することが可能になるばかりか、顔から老若男女の判別も行えるようになりました。この成果は、経済経営研究所で得られたものであります。

このように、人工知能の発達は、計算能力向上とビッグデータの収集技術の下支えで、人間を超えた認識が出来るようになりました。この弱い人工知能と強い人工知能の間にある、何処で人間の能力を超えるかという転換点の問題も発生しました。これをシンギュラリティと言います。しかし、全てが全て人工知能の処理が人間の知能を超えると言う転換点はないのではないかと言うのが内種先生の見解です。計算能力向上とビッグデータの収集技術がいくら向上しても、ビッグデータ処理技術、すなわち先達が研究や生活を通し培ってきた知見は最後に必要になるとのことです。

計算社会科学の説明を判りやすくやって頂きましたが、なじみがないせいか、難しいと感じました。 しかし、これからの文理融合(社会科学とコンピューター「京」の利用)で、新しい計算社会科学の日本の殿堂となることを期待したいと思います。

9月定例会

日時 :2017年9月19日(火) 19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :清水 和也氏(NTT西日本ビジネスフロント社・代表取締役社長)

演題 :「NTT西日本のチャレンジ」

 今月はNTT西日本ビジネスフロント社・清水社長にお願いしました。

入社は1988年(昭和63年)で今年は30年目の節目にあたるとのことです。NTTを選んだのは「電電公社からNTTへ」と変化する中で、「カラ」を打破れるのではないかというワクワク感、若い力、若い感性を生かせるのではないかという思いからだったということです。

前半は構造改革を中心に、後半は最近の取り組みとしてアライアンス営業(提携・連携営業)中心にお話頂きました。

Ⅰ.「デジタル化」、電話屋からマルチメディア屋への変化の歩み

① 日本の電話は、戦後高度成長の流れを受けて急ピッチに拡大し、約40年後に約6000万契約でピークを迎えます。当時の電電公社は32万人の従業員をかかえていました。やがて85年には通信が自由化され、新規参入事業者(NCC)との市場競争による経営効率化と料金の値下げが強く求められるようになります。入社したころのNTTは、「デジタル化」の真っ最中。電話局が減り、自動化、コンピュータ化が進む中で、大量の設備・人員が不要になる現実にどう対処するかという課題に対処する日々だったとのことです。

② 通信の自由化と同時に、NWのオープン化が始まりました。新規参入事業者に対し公平な条件で設備を開放するよう厳格にルールが定められるとともに、料金競争を促進するため、再三にわたる貸し出し料金(接続料)の値下げが行われました。特に米国からの値下げ圧力は熾烈なものがあったようです。他方NWのオープン化は、ADSLサービス等日本のインターネットの普及を後押しする結果になりました。最近では「光」のオープン化が進んでいます。「行き過ぎたオープン化は設備投資のインセンティブを削ぐ」と激しい議論はありましたが、現在は世界的に見ても最もオープン化が進んだルールになっているとのことでした。

NTTの変化の源流には「デジタル化」があるとのことです。昨今さまざまな産業でデジタル化が進んでいますが、デジタル化はサービスのあり方を変え、組織を変え、社員一人ひとりの仕事の仕方の変更を迫るということで、NTTにおいても90年代、「電話屋」から「マルチメディア屋」への変貌が求められたそうです。OCNや映像通信等の新しいサービスが生み出され、これらの取り組みがその後インターネットや光サービス等につながったようです。

Ⅱ.デジタル化の仕上げとしての構造改革

度重なる値下げやオープン化に加え、電話⇒IP、固定⇒携帯へとニーズが大きく変化する中、再編成が行われ、電電公社以来の人員、資産を引き継いだNTT西日本の財務は大きなダメージを抱えることとなりました。拠点廃止等の効率化に取り組みましたが、追いつかず、人的コストの削減に踏み切ることになり、2002年「構造改革」に着手したとのことです。

一つは業務のアウトソーシングということで、新たに会社を設立しNTT西日本だけで6万人の社員を新会社に移行しました。二つ目は雇用形態の多様化ということで、新会社に移る50歳以上の社員に対し、勤務先を固定し65歳まで雇用を延長するかわりに給与水準を15-30%下げる制度を導入したとのことです。職場のモチベーション等様々な課題はありましたが、結果的に9割以上の社員が受け入れ協力してくれたとのこと。清水氏は、当時本社の人事部で本制度の導入に従事したことが、キャリア上のコアな経験だった、と述べています。

Ⅲ.自前主義の脱却、アライアンスによる成長を目指して

構造改革後も徹底したコスト削減を続けながら、次の収益源である光サービスの拡大に注力。2015年ごろからは光サービスの収支も改善し、今年3月期には過去最高益を更新したとのことです。

ここ最近、あるいは今後注力していくのは、他社とのコラボレーションということで、いくつかの事例について動画を交えて説明がありました。5年前から自前主義の脱却ということで、様々なプレイヤーと協力しながら光サービスの利活用の幅を拡大する取り組みを進めてきたとのことですが、特に最近は、IoTの時代とも言われ、光サービスと情報システムを組み合わせたビジネスが広がりつつあるとのことです。清水氏は初代「アライアンス推進室長」ということでこのような動きの旗振りを行ってきたとのことです。

① 福岡市との実証実験では、福岡市内に広域の無線のNWを張り巡らせ、センサー等を活用して、行政サービスの効率化や充実を図っていくこととしており、ガス・水道の検針、ごみ収集の効率化、災害時の情報収集・提供、交通対策等様々な利用を想定しているとのこと。

② 地域wifiを活用した地域活性化の取り組みでは、日本を訪れる外国人から要望の強いwifi環境の充実を各自治体、地元経済界と連携して進めているとのこと。単にアンテナを設置するだけにとどまらず、利用実態を分析すると国毎に周遊ルートはかなり違うようで、そのような分析を通じて観光地を売り込む等、地域活性化の取り組みを地元と一緒になって進めているとのこと。

③ 通信を活用した遠隔診断の取り組みでは、京都ですでに実用化されているCTやMRIの医用画像を光サービスを通じて遠隔診断を行っている事例を紹介いただきました。読影できる医師のいない舞鶴の病院と京都を結んで、撮影画像を送信し市内の専門医が診断結果を返すという仕組みで、緊急を要する場合は1時間以内には診断結果を返すこともできるということで、医者が少ない、あるいは特定の専門医がいないといった課題を抱える地域の課題解決につながっているとのことでした。

④ それら以外にも、現在は情報セキュリティに力を入れて取り組んでいるとのこと。IoTなどコンピュータ通信がまずまず拡大する中でサイバー攻撃の被害に合うケースは飛躍的に拡大してるようで、最近話題の身代金ウイルスの広がり以外にも、海外では地下鉄等の社会システムに影響が出る深刻なケースも増えている。まずは防御が大切だが、100%防御は難しいという前提に立って、監視、検知や拡散防止、回復までトータルにサポートする仕組みが求められているということです。

なかなか変化の激しい環境の中で、果たして自分に置換えてみて数々の難題をはねのけることが出来るかと感じさせた講演でした。難題が一挙に押し寄せてきても時間をかけて一つ一つ片づけるしかないと思った次第です。

しかし、変化の中でリストラ・経費削減だけをするのでなく、同時に、競争の中で通信費の値下げをしつつ売上・営業利益を上げてきたことが重要ではないかと思いました。

多くの従業員の方々が、将来展望ナシだとみんな辞めてしまうのではないか。対して将来がプラスで展望が開けるだろうと従業員全員が感じられることこそ重要ではないかと思いました。                      

文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計31名


ビアパーティー2017・留学生を励ます会

日時 :2017年8月9日(水)18時30分より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

 本年も恒例のビアパーティーが一般社団法人大阪凌霜クラブ/神戸大学学友会大阪クラブ、一般社団法人凌霜会大阪支部の共催で盛大に開催されました。留学生18名をむかえ、総勢75名も集まりました。入りきれないかと心配しましたが取り越し苦労でした。多くの方々が出席して頂き留学生との交流を深めたひと時を過ごしました。

冒頭、宮本理事長が挨拶致しました。その後来賓の方々の紹介に続き、武田学長のご挨拶が続き、大坪凌霜会理事長のご発声により全員で乾杯を致しました。

神戸大学への海外からの留学生は、87か国1,200人にも及び、今回は13か国20名の方々を招待しました。始めに真夏の夜のジャズと銘打ち、軽音楽部の若江先輩のピアノにのせて、竹田さんの女性ボーカルで始まりました。

続いて、河合国際教育部総合センター留学生教育部門長が海外の同窓会を紹介しましたが、皆さんお酒もまわって聞いていない方が多かったかなと思いました。

次に、若手の会堀内さん・藤田さんの司会でエジプト、アルジェリア、エルサルバドル、ベナン、ネパール、ポルトガル、ナイジェリア、ドイツ、カンボジア、ロシア、中国、香港、スリランカといろんな国の方々、18名にスピーチを頂きました。社会科学、薬学、農学、医学関係の研究に携わる方や将来は日本で就職したいので学業の傍らインターンシップで働いている方等々、片言の日本語の方、流ちょうな日本語で語られる方等々自己紹介をして頂き、1人1人が自覚して日本に来て勉強しようという意欲と姿勢が感じられました。

続いてプレゼント抽選会が始まると、留学生には始めは豪華な景品が当たらなかったのが当選者から留学生へのプレゼントもあり、盛上りを見せました。江崎グリコ社長も最後に一番いい「松阪牛」が当りましたが、心優しく、留学生にお譲りされました。

最後は次期の正住運営委員長の挨拶で終わりましたが、飛び入りで、応援団出身の川本さんのエールでおひらきとなりました。

文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計75名


7月定例会

日時 :2017年7月18日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :神木 哲男氏(神戸大学名誉教授)

演題 :「神戸開港 150年 神戸今昔物語」

 今月は、日本経済史ご専門の神戸大学名誉教授神木哲男様にお願いしました。

先生から「『神戸開港150年海フェスタ・帆船フェスティバル』が7/15-7/17にありました。」「(5/19)神戸まつり『神戸開港150年』の懐古行列で私も(J・W・ハート)で登場し、元町本通り・センター街を練り歩きました。」との事。(J・W・ハートは、イギリス人土木技師で「居留地」の設計にあたった方。126区画に整備され、歩道・車道の区別、海岸通り沿いの緑地帯、下水道の埋設等、設計から「東洋一の居留地」と当時の英字新聞にも紹介されました。)

【居留地・雑居地・開港】

「居留地」とは、全体が22の街区、126区画(1区画平均200-300坪)、中央に90フィート(27㍍)のメイン・ロードが南北に貫通していました。(その区画の代表的なビルは商船三井ビルです。)南に緑地帯があり、海岸が拡がっていたとのことです。(現在の海岸線は100㍍ほど南です。)「居留地」の南東にはリクリエーション・グラウンドがありました。現在の東遊園地とのことです。

神戸の「居留地」は大阪・横浜・長崎等の開港場と比べても、最も区画も整備されており、日本人との仲も最も良かったとのことです。

日本人の住む地域に外国人が混じって住むことが認められたのが「雑居地」。「居留地」の西側には中華街「南京町」があり、北には、うろこの館・風見鶏の館に代表される「北野異人館」は異国情緒漂う「雑居地」がありました。

【神戸事件】

1853年にペリーが来航してから日米和親条約(1854年)、日米修好通商条約(1858年)を経て1868年1月1日、神戸開港に至りました。孝明天皇は大の外国嫌いで、開港・開市にも年月がかかりました。大丸の北に三宮神社があり、開港間もない1868.2.3に神戸事件がありました。備前藩士の西進時にフランス兵2人が隊列を横切ろうとして双方が拳銃を発砲。来神中のイギリス公使パークスが停泊中の英・米・仏艦船に上陸を要請。神戸が占領される状態になった。開港後、始めての事件でしたが、備前藩・滝善三郎の切腹で決着しました。

【神戸から始まったジャパナイゼーション】

外国船の来航、居留地での外国商人を経由して、ヨーロッパの文明・文化が入ってきました。1882年(明治15年)発刊の「豪商神兵湊の魁」には版画で当時のお店が570店余りも載っているとのことです。「印度産放香堂加琲」(1878年~石臼でインド産コーヒー豆をひく)、柴田音吉洋服店(1883年~)、亀井堂本店(1877年・瓦せんべい)、月下亭(牛肉・「神戸ビーフ」の魁でしょうか)、外国亭(西洋料理)、時計屋、写真屋、靴屋等々、布引の水販売店(大島兵太郎創業の現在の神戸ウォーター)等々、目新しいものが「居留地」「雑居地」に住む外国人から神戸を通じて全国に展開されていったとのことです。神戸こそは欧米文化の「ジャパナイゼーション」発信基地だったのです。

なかでも神戸から世界に輸出された代表的なものはマッチです。兵庫県産が80%、内輸出が60%です。特に滝川辨三は「東洋の燐寸王」と呼ばれました。現在の滝川中学・高校は彼が巨費を投じた教育事業でした。

【街の整備】

開港後も街の整備が進みました。1870年(明治3年)8月に着工した石屋川のトンネル、住吉川・芦屋川と天井川には次々日本初の鉄道トンネルが造られました。

六甲山が水源の生田川は布引の滝を経由して、現在のフラワーロードを流れ居留地の東側を流れていましたが、度々氾濫し、水害が居留地まで及びました。そこで、現在の新神戸駅の辺りから一直線に海に流れるように付替えられました。材木商・加納宗七が請負い、1872年(明治5年)10月に着工、1873年5月に竣工するという短い期間の突貫工事でした。

【居留地の返還】

1894(明治27年)7月17日に居留地は返還されました。横浜は「撤廃」であり、神戸は「返還」という言葉が使われたということです。

返還式でのフランス領事のド・ルシエ・フォサリュウの挨拶は西洋式の立派な街を返還するという思いに満ち溢れていました。「居留地の歴史は神戸の歴史」であり、「30年間、居留地内で特筆される大きな変動や紛争は一つもありませんでした。」とのこと。横浜・長崎のように「居留地」に外国人を閉じ込めるのではなく、「居留地」の外国人から良いところは学ぼうという神戸のオープンな特色があると感じました。開港時の「居留地」という名前を付けた番地表示は神戸しかありません。横浜も大阪も長崎も歴史は残りますが、全く番地の表示はありませんとのこと。大いに誇りに思いました。

パワーポイントで、明治始めの神戸の歴史(「居留地」、生田川・湊川の付替え等々)をお話頂きアッという間の1時間の講演でした。

特に、神戸の居留地は「返還」という言葉を使い、横浜は「撤廃」とのことが印象に残りました。何事も欧米の文明・文化を受入れて、そこから、日本中に発信、そして、海外へ発信する「ジャパナイゼーション」こそ誇るべき神戸の先進性だと思いました。

文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計37名

6月定例会

日時 :2017年6月20日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :地主敏樹氏(神戸大学大学院経済学研究科・教授)

演題 :「トランプ政権の経済政策」

今月は神戸大学の地主先生に講演をお願いしました。先生はアメリカ経済論・金融論がご専門です。トランプ政権下の経済政策を中心に語って頂きました。

【大統領選挙の振り返り】

直前まではヒラリーが有利という予想でしたが、トランプが勝利をするという番狂わせ。(中西部の)ラストベルト・(アパラチア山脈をかかえる)炭鉱地帯を丹念に回ったのが勝利につながったのは明らかです。(シナリオはクシュナーが書いたと言われました。)

ヒラリーは、夫ともども金融業界と密接につながり、自由貿易派と見られており、本来の労働者階級の民主党とは肌合いが違います。これを逆手に取り保護主義・反ウォールストリート・反移民を、ラストベルト・炭鉱地帯の労働者向けに訴え逆転勝利。トランプは民主党予備選のサンダースの強み、ヒラリーの弱みを突いたとのご指摘は当たっていると思いました。

【選挙公約・最初の100日】

政権が動きだし数か月も経過すると、ウォールストリートのゴールドマン・サックス経営陣から多数登用しました。反ウォールストリートはどこにいったのかと思いました。

最初の100日間、大統領令の多発が目立ちました。公約の「移民制限策」としてイスラム諸国7か国からの「入国制限」を訴えましたが、反対の声とデモが起こり、地裁・高裁レベルの判決では違憲が示されました(その後、最高裁は条件付きで10月までの執行を承認)。一方不法移民の摘発は増えました。

安部首相・習主席との会談は柔軟路線を演じました。しかし、準閣僚の人事停滞で、日米経済対話は未だ実質的には進んでいません。

オバマケアの修正案が5月に下院を通過し上院で審議中とのことでした。下院で否決、全て終ったと思いましたが違っていました。

【選挙公約・経済政策は】

選挙公約「アメリカを再び偉大な国にする」(メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン)を実現する経済政策として「関税引上げ」「広範な減税」「金融・環境規制緩和」「オバマケア撤廃」「インフラ整備」を掲げました。経済成長率を上げ、雇用増加で「アメリカ ファースト」を実現しようという内容です。

これらは熱狂的な支持者であるラストベルト・炭鉱地帯の労働者向けの強烈なアッピールであります。オバマ大統領時代の8年間は理想ばかりが先走り、何も実現できなかった大統領と言われています。経済政策は「金融規制法」、「オバマケア」、「バリ協定締結」等で、直接雇用・賃金に関わるものではありません。

対して、トランプの掲げた「関税引上げ」「減税」「金融環境規制緩和」は経済成長につながり雇用促進につながりよりアピールしたのでしょうか。

1980年代から中間層の没落が静かに進んでいるとのご指摘でした。「保護貿易」推進するために、TPP離脱、2国間貿易赤字重視、NAFTA再交渉するとのことです。税制改革の中核は減税と簡素化であり、法人課税の仕向け地主義への転換ですが、その一環として「蓄積された過去の海外所得に対して低率課税」で還流させて「インフラ整備」に投入するのが現実的な案だと思いました。しかし「減税」で大きな難題は連邦税制に対する影響です。トランプ税制が実現すると、GDPに対する負債比率が上昇、10年後には130%になるとの調査機関の予測もあり、議会を説得できるのかと感じました。

パリ協定からの離脱は、選挙公約であり、石炭産業の雇用確保、エネルギーの自給化と主張していますが、先進各国から大批判を浴びました。

このようにトランプ大統領の政策は、政治・外交・社会・経済と幅広い問題を提起しましたが、一方で、世界中でアメリカが一番景気がよく、企業業績もよく株式市場も堅調であることを考えれば、果たしてトランプの経済政策はどこまで議会を通過するのかと思いました。

【結び】

「オバマケア修正案」「金融規制緩和」が下院を通過し、経済政策も動き出しました。無理を言っているようだが、正当な部分もあるとまとめて頂きました。

マスコミとの舌戦、選挙戦のヒラリーとの舌戦がめだちますが、次々と問題提起をしてくれた大統領であると思いました。取分け経済政策はそうです。

しかし、コミ―FBI長官解任でロシアゲートに火が付き、大統領弾劾の可能性はありと見ました。又、トランプフィーバーも治まり、大統領がいてもいなくても経済は低成長ながら成長し、失業率も現在の4.5%程度を維持し、インフレにもならずと見立ては如何でしょうか。

ご講演終了後も、格差社会、金融政策の行方他質問が相次ぎました。問題が大きいだけ焦点ボケするも活気のある講演会となりました。地主先生ありがとうございました。       

文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計47名


5月定例会

日時 :2017年5月16日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :簑原俊洋氏(神戸大学大学院法学研究科・教授)

演題 :「トランプ大統領就任100日経過後の総括」

 

昨年の5月に続く簑原先生のご講演となりました。「トランプ大統領」の100日はどうなったかという誰もが興味をひく演題でした。 前回のご講演は、不人気な大統領選挙だが、共和党ではトランプが、民主党ではクリントンが候補として選出されるだろう。だか、その時点ではわずかにクリントンが有利であるとの内容でした。今回は、トランプが勝利し、世界をアッと驚かせて大統領に就任してから蜜月期の100日間を経てのこれまでの成果や政権の今後の行方についてご講演頂きました。

昨年11月の選挙で浮き彫りになったのは、アメリカという国家の分断がより深刻になったとのご指摘でした。我々は、自由を標榜する国アメリカは、リーマンショック後に著しい回復を遂げたと思っていましたが、選挙後に見て取れる姿は、その裏に深刻な実体があるとの指摘されました。

① 3100余りの選挙区の内、両党の間で一桁台の開きのあるのはわずかか300余りに過ぎない。これはほとんどの選挙区ではいずれかの候補が圧勝した事実を示している。

② 2016年の選挙では、大統領選挙人選挙戦で勝利した政党が上院選も全てを制した。これは米史上、初めてのことである。

③ トランプの支持率は現在42%で、一度も50%を超えたことがない。ただ、共和党支持者に限定すると彼の時事率は87%と極めて。しかも、彼に投票した有権者の間では96%という驚異的な支持率を維持している。

④ ゴーサッチ最高裁判事の任命に当っては、連邦上院の共和党は禁じ手の「核オプション」を行使してルール改正を強行したが、これが後々にアメリカの分断を深めていく効果を増長させる。

⑤ アメリカ大統領選挙は間接選挙であり、一般投票で勝利した候補が敗北する捻れ減少は過去に4回ある。今回は2000年のブッシュ対ゴアの逆転以来だ。少数により選ばれた大統領だが、負けた候補が約300万票も多く獲得したのは米史上にて最も多い数字である。

⑥ 連邦議会における共和党の議席は、上院は52で下院は241である。これは上院における共和党の支配が盤石ではないことを示す。

これら数字が示唆するのは、トランプ政権は今後「綱引き」と「綱渡り」をうまくマネージしなければならないという事実です。つまり、トランプ大統領は強い指導力と鋭いバランス感覚が求められます。しかし、就任演説には、スローガンはあるが共和党の理念は欠如。自らを支えてくれる政治基盤もない。それゆえ、頼れるのは娘婿のクシュナーと娘のイバンカだけである。こうした結果、うまく綱渡りをするため、今後の政策をかつての帝政ローマの公邸と同様に「パン」と「サーカス」を駆使したものとなろう。

目下の関心は、アメリカの対北朝鮮政策がどうなるかにあります。「戦略的忍耐」政策は終わったが、それに取って代わる政策がまだ見えない。ただ、トランプは「弱い無防備なアメリカ」を看過できるはずがなく、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの開発・配備に成功したら、アメリカによる予防的先制攻撃の可能性も排除できない。その場合、韓国や日本にも被害が及ぶかもしれないが、トランプの中ではアメリカ第一であり、隣国に対する配慮の優先順位は低いと考えるのが妥当だろう。くわえて、北朝鮮への攻撃は21世紀の「サーカス」の効果もあり、世論をかく乱させ、自分への捜査に対する関心を避けるためには一つの有効な手段となる。忘れてならないのは、核ミサイルの発射大統領のみの判断でできるという事実である。

さて、ご講演の最後にコミ―連邦捜査局(FBI)長官の解任問題にも触れられました。長官解任は新たな火種となり、「ロシアゲート」という形でアメリカを大きく揺らすことになるのではと締めくくって講演は終了しました。 大変面白くも有意義な講演だったと思います。 「ロシアゲート」事件は始まったばかりですが、お話のように、ホワイトハウス人材の枯渇とゴタゴタ、足の引っ張り合い、連邦議会対策もままならずとなれば、「弾劾裁判」が始まり、大統領解任というシナリオもありだと思いました。しかし、その前にペンスさんに禅譲という可能性もあるかなと思いました。

文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計36名

4月定例会

日時 :2017年4月21日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :巽 好幸氏

演題 :地震・火山大国日本に暮らす覚悟

 

今回は、神戸大学海洋底探査センター・センター長の巽好幸先生にお願いしました。先生はマグマ学のご専門家です。マグマ学と言われてもピンときませんが、先生が殆ど独自に切り開いてきた学問です。

始めに寺田虎彦の有名なことば「天災は忘れた頃にやって来る」から始まりました。

日本は4枚のプレートに覆われており火山噴火・地震が多い。しかし、世界を見渡せば、プレートが何枚も重なり合っている地域は他にも多い。最古の太平洋プレートは古いため重く冷えたプレートが年10cmという高速で沈み込み、最も新しいプレートであるフィリピン海プレートは、若く軽く温かいプレートが数cmの低角で沈み込む。プレートの沈み込みの様式が違うので地震が頻発するとのことです。

ところで、地震と言えば、話題になるのが地震予知。今までいろいろ議論されてきましたが、現状での予知は不可能とのご意見です。例えば1995.1.17の「阪神淡路大震災」の前日の地震の発生の確率は約1%でした。ところが、翌日に地震が起きました。要は日本列島では地震はどこで起こっても不思議ではありませんとのこと。安易な予測を信ずるべきではないとのことです。首都圏直下型地震でも南海トラフ地震でも30年間の発生確率は70%でずが、この確率はロシアン・ルーレットのように日々高くなって行きます。(地震の確率は1%とか、何千年に1回とマスコミと言っても安易に理解すべきではないと戒めていました。)

一方で、火山・地震の恩恵を受けるのが「和食」とのことです。日本列島は山国であり、雨が降っても急な斜面を流れます。流れが速くマグネシウム・カルシウム分が少なくなり軟水となります。対してヨーロッパは平地が多く雨も流れが緩やかになり、マグネシウム・カルシウム分が多く硬水となります。日本では昆布・鰹節と軟水が、おでん・和食の味を引立たせ「うま味」がかかせません。うまい日本酒と料理こそは火山の恩恵であるとのことです。

平成28年の学長を囲む会で、武田学長は今年度の目玉は、「鬼界カルデラ深海底探査」と語っていました。巽先生の研究に寄れば、過去、日本の12万年間にカルデラ噴火は10回あったとのことです。鬼界カルデラ噴火は、今から7,300年ほど前に起こったマグマが噴き出す大噴火。先生はこの「カルデラ型大噴火」は、御嶽山・桜島の噴火とは全く違ったメカニズムとのことです。 鹿児島県の南の海域に鬼界カルデラがあり、大きさは21km×17kmというから驚きですが、7,300年前の大噴火で九州の縄文時代人は死滅し、文明は壊滅したとのことは更に驚きでした。1万2千年に1回とは単純に周期に直すと1.2万年~1.3万年ですが、先の「阪神淡路大震災」の前日の地震の起こる確率の1%と同じだとのことです。詳しくはボアソン分布とワイブル関数で分析できるとのことですが、文系の我々はチンプンカンプン。 要は、1.2万年に1度と言っても、阪神淡路大震災の前日の地震の確率と同じと思えという主旨とのことです。火山灰は40kmの高さまであがり、火山灰は関西地方では30cm、東北地方にも及びました。「アカホヤ火山灰」として日本列島に痕跡をします。こんな「巨大カルデラ噴火」が起こると、2時間で700万人が死亡、1日で4,000万人が死亡、木造家屋は火災と噴石で全壊との恐ろしい予測。火山灰は本州全域を覆い、1億人がインフラ喪失で食べるものもなく生活できなくなる大災害となるとの予測です。  

だが、1万年に1回の大噴火だ、100年に1回の大地震だと聞くと我々は妙に安心する。官僚の方々との予算折衝でも、単年度決算を前提にする官僚の方々は余り聞く耳を持たない。だが、予測される被害を前提にして我々はどうすべきか真剣に取り組むべきであるとのご意見でした。原発事故は起こさない、起こらないと言いながら、起こった原発事故を思い出しました。「鬼界カルデラ」の近くには川内原発があり、大丈夫という依頼心・安心感は常に戒めるべきだと感じた次第です。

 文責:瀬野 鋼太郎・S46年経営卒

出席者合計29名


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