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3月定例会

日時:平成31年3月19日(火) 19時より

場所:当クラブセミナールーム

講師:簑原 俊洋氏(神戸大学大学院法学研究科・教授)

演題:「就任3年目のトランプ大統領とアメリカの展望」

今月は、簑原先生にドナルド・トランプ大統領はアメリカをどこに導くのか、また、アメリカはどこに向かうのか、といったテーマで講演をお願いしました。その延長で現在の日本の立ち位置についてもお話いただきました。

まず切り出しに、何事も過去を振る却って分析するのは比較的容易だが、他方で同時代を読むのはなかなか難しい、との指摘がございました。

国際政治学者は、米中の覇権闘争を「覇権移行期」と一般的に呼んでいますが、簑原教授は覇権移行が確定したわけではないのでむしろ「覇権挑戦期」と捉える方が正しいとのこと。なぜならば、中国の覇権奪取への野望は最終的に挫折するからです。とはいえ、「覇権挑戦期」は国際政治が大変な不安定な時代を迎えることになるとのことです。

その不安定となる要因の一つは、アメリカの一超大国が終焉を迎えつつあることにあります。簑原教授によれば、米中の覇権闘争はすでに始まっており、中国による覇権挑戦は始まっているとの指摘がありました。

近代の覇権はスペイン⇒イギリス⇒アメリカと変遷してきた。でも、どんな帝国も永続することはありません。そして、覇権国が国際的なルール(規範)を決める。パックスを築き、圧倒的に強いから可能となるのです。かつてイギリスは海軍力が強く、植民地支配し、貿易によって培った巨大な経済力を背景に日の沈まない帝国を築きました。また、イギリスに次いでパックスを築いたアメリカは、世界に公共財を提供し、自由主義社会を支えましたが、現在のアメリカは余裕を喪失しかけています。逆に中国は勢いを増し、「チャイナ・ドリーム2049」を掲げてアメリカに果敢に挑戦しだしました。このように、「チャイナ・ドリーム」と「アメリカ・ファースト」が令和期において暗い影を落とすことが心配されるのです。

かつてのスペインもイギリスも衰退期に突入するとリーダーの質が格段に下がりました。同様に、トランプもアメリカのリーダーシップが一気に低下したことを如実に示しています。しかし、今思えば、この衰退期はジョージ・ブッシュ(子)の時代から始まったと考えられます。どの時代も戦争は国力を奪う者ですが、アメリカもブッシュの下でアフガニスタンとイラクの両戦争に踏み切り、国力をジワジワと消耗させました。意外にも、オバマも「アメリカは世界の警察官ではない」と訴え、この路線を継承しています。そして、反体制のトランプが登場し、声高にメキシコとの国境の壁を築くと支持者に主張し続けています。しかし、ローマ帝国の衰退の契機となったのは、「ハドリアヌスの壁」も建設でした。イギリスの19世紀の地政学者のハロルド・マッキンダー曰く、「壁」を築いた瞬間、国家の内向き傾向は顕著となり、衰退が加速します。

トランプによってアメリカは分断されています。私は南北戦争を除いてここまで深刻に分断された時代を知りません。たとえば、ベトナム戦争期の分断は、若者・大学生とその他の世代との分断でしたが、他方で民主・共和党の両議員の対話はありました。それが現在では敵・味方として激しく衝突するに至っています。

こうした時代において日本はどう対応するべきなのか。これからの日本は、安全保障観にもっとリアリズムを持たせ、さらには価値観と原理原則に基づく外交を能動的に展開される必要があります。さらには、尊いとする価値観を擁護するためにも、域内セキュリティ・プロバイダーの役割を果たさなければいけない時代に差し掛かっているとも思います。つまり、「責任ある大国」としての意識を持ち、世界の平和と繁栄の維持により積極的に関与する必要性があるのではないでしょうか。アメリカのパックスが揺らいでいく中において、今後は価値を共有する大国どうしの連携が極めて重要になっていくと思われます。日本もその構成国として必ず残れるように尽力しなければなりません。

以上

出席者合計32名

12月特別例会・忘年会兼若手歓迎会

日時:平成30年12月18日(火) 18時30分より

場所:当クラブメインホール

 

 今年も忘年会の季節。昨年よりチョッと少ない47名の方のご出席を頂きました。

 吉川事務局長の開会宣言のあと、宮本理事長の挨拶、来賓の凌霜会一木常務理事の乾杯の音頭で忘年会は始まった。
 今年も、丸紅合唱団「コールフェリーチェ」に特別参加頂く。「きよしこの夜」「もろびとこぞりて」はピアノの音色によく乗って室内に響く。みんなで「きよしこの夜」を斉唱し雰囲気を盛り上げる。

 今年も来年4月に就職する若人が6名参加。フレッシュな若人の声が聞かれた。特に「出身校」「ゼミ」が同じだと、歓声があがり、それだけ親近感が増した。各自今後の抱負を述べ頼もしい限りだった。若者に大いに期待できる。

 私自ら考え頭を振り絞って考えた「神大クイズ」も受けたようだ。神大のいろんな場面の写真撮影に苦労したが、問題づくりも一苦労。お蔭で、失言・失敗も多く、宴会のためか大いにうけた。

 続いてプレゼント抽選会。息の合った藤田・落合・湯山・谷口の「若手の会・四人組」で司会進行景品渡しをする。景品に当った感想に笑い声があがる。 最後は、乾運営委員長の〆で終わりとなった。が、一つ反省は、いろいろアドリブを入れたので、「長すぎた」との感想もあったが、みんな楽しまれたことだろう。

 この日は出席者の皆さんにお菓子のお土産。年配の方はお孫さんへのクリスマス・プレゼントとなったのではないでしょうか。

(文責・瀬野鋼太郎・S46年経営学部卒、写真・酒井龍太郎・H19年法学部卒)

出席者合計47名


11月定例会

日時:平成30年11月20日(火) 19時より

場所:当クラブメインホール

講師:小見山 純郎氏(大阪湾水先区案内人、海神会会長)

演題:「船乗りの仕事 水先人(pilot)の仕事」

今月は海事科学部の同窓会・海神会の会長の小見山様にお話頂きました。我々陸上勤務のサラリーマンと違ったお話を頂きました。

1972年に神戸商船大学を卒業され、2008年まで日本郵船にご勤務。陸上勤務10年を含め、全船種に乗られたとのことです。その後、大阪湾で水先人を勤めておられます。水先人とは「港を訪れる船の船長を支えるアドバイザーであり、船を安全かつ迅速に導く海の案内人」です。水先人は個人事業主であり、全国に35水先人区があり、大きいのは東京150人、大阪108人在籍、全国で600名強在籍していますとのことです。船の事故は80%がヒューマンエラーとのこと。太平洋でもアメリカと日本の大圏(2地点間の最短距離)でも、どの船もそのコースを選択するので、大海原でも衝突の危険性はあり、船長は責任を持って仕事をしているとのことです。

1970年代からの今も引きずる雇用の話、面白い話をピックアップしました。

日本人船員は、外航船員数1974年は5万6千人いました。昨今は2,621人を切りました。フィリピン人、韓国人、ミャンマー人等外国人船員がその多くを占めています。人件費が日本人の3分の1。船乗りの世界ではグローバル化の嵐は1970年代からいち早く進んでいました。人員も削減され11人でやっていた時代もありました。今は完全にボシャりました。人員が少なく船のメンテができなくなってしました。新聞に登場する船会社の合併と赤字の話、雇用水準をどうするかという深刻な問題は耳にタコが出来るくらい聞かされたような気があります。グローバル化が進みすぎると、船員も水先人も日本からいなくなるひどい話だと思いました。しかし、仕事の魅力をPRしており、効果も徐々に拡がっているとのことです。

船の復元力は何度でしょうか。60度傾いてもいけるそうです。北太平洋の大シケの海2日間、42.5度の傾きを経験されたとのことですが、2日間も経験すると生きた心地はなくなるのではないかと感じました。

スエズ運河は1869年に完成、193km、深さ24m、幅205m。利用することで3千万円かかりますが、8日間・3500マイル(5600km)の短縮との事です。

パナマ運河は1914年完成。80km、浮力を利用し26mの高さまで、3つのロックを一気に上がり下がります。2016年に5,500億円かけて拡張され、従来の3倍の貨物量がいけるようになりました。最大船けい336m、幅49mの船まで航行できるようになりました。今後はシェールガスの輸送は日本に多大なメリットがあります。

海賊は少なくなりましたが今でも出没。西アフリカ航路で、近付いて来た船があり、「船を止めろ。ビール何ケース、タバコ何カートン」寄こせとおどされたことがありました。又、マラッカ海峡で無灯火のボートが近づき、追い掛けられ逃げまくったこともあります。今でもソマリア沖では自衛隊が海賊退治のため警戒しています。

ところで、それ以外に水先人の現状、仕事の重要性、研修、船を運航する時の組織等々、真剣なお話も頂きました。最後にビデオ研修を受けました。ギリギリの人数で24時間、365日、休むことなく船を運航し、緊張を強いられる仕事だと思いました。 貨物は全体の99%を船で運びますとのこと。70%ぐらいか思いましたが、海に囲まれた日本、海に面した神戸港、そして、神戸大学。 小見山様ありがとうございました。

(文責・瀬野鋼太郎・S46年・経営学部卒)

出席者合計29名

10月定例会

日時:平成30年10月16日(火) 19時より

場所:当クラブメインホール

講師:鈴木 竜太氏(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

演題:「越境学習と神戸大学MBAの取り組み」

 

今月は鈴木竜太先生にご講演頂きました。

始めに「越境学習」という耳慣れない言葉が登場しました。「越境学習」とはどういう意味でしょうか。ビジネスマンが自分の組織にとらわれず、組織外のことに学びの場を求めることです。それにより新情報が得られる。違う考えが得られる。他流試合で自分を確かめることが出来る。出席者と新しいネットワークが築くことが出来る、交流の場が拡がる。等々、相乗効果も期待できます。

今の低成長時代には経験を積むためには障害があります。高度成長期は、ビジネスマンもチャレンジして大いに成功体験・経験を積みました。ところが、低成長時代になり、より優れた提案しか予算がつかない、逸脱はダメ。同調せよ、コンプラが問題だ、この通りやれ‼という仕事の流れが定着しました。成功より失敗がビジネスマン人生に反映されるようになりました。

低成長時代になり、組織に、様々なマネージメントする経験、あたらしいものを生み出す経験、とことん考える経験が仕事の現場から少なくなってしまいました。この経験不足を補うため、MBAの場で、様々な企業らこられた方々が、様々な背景の人々と様々な意見を出し合い、切磋琢磨し共同学習することが望まれる時代になりました。

神大式MBAの特徴は、企業に勤めながらMBAに通うところ、またプロジェクト研究と呼ばれるプロジェクトをもとに学ぶことにあります。そこでは最新の経営学の知識について、先生が学生を教えるという一方通行の場だけでなく、ビジネスマンの企業における経験を出し合い、他のいい考えを受入れ、更に自分自身の考え方を深掘りし、学生間の議論を通して、スキルアップしていくことに特徴があります。

(文責・瀬野鋼太郎・S46年・経営学部卒)

出席者合計23名


9月定例会

日時:平成30年9月18日(火) 19時より

場所:当クラブメインホール

講師:西村峯裕氏(京都産業大学名誉教授)

演題:「国の守りは自助、共助 自衛隊教務支援の経験から」

 

今月は京都産業大学名誉教授 西村峯裕氏(昭和43年卒、法学部、山木戸ゼミ、昭和50年博士課程修了)に講演いただいた。

先生は中国の文革、人民解放軍の研究から中国の民法を中心とする法制度の研究に進み、知遇を得て朝鮮総連の方も知り、金日成の北朝鮮の研究もしたとのこと。そんなことで、京都の大久保(宇治市)にある自衛隊の駐屯地で講演を頼まれ、更に、請われて経理、補給などの教育を行う海上自衛隊第4術科学校(舞鶴)や陸曹(下士官)の教育を行う第4陸曹教育隊(大津)などで教務支援(部外講師として教務の一部を担当する)に携わってこらた。

朝鮮半島が緊迫化する今日、臨戦態勢の中で国民を守るために緊張した日々を送っている自衛隊の状況を淡々とお話しいただいたが、「ボーッと生きてんじゃネエヨ」と、チコちゃんじゃなく西村先生に怒られた感がした講演だった。

自衛隊は、1950年、朝鮮戦争勃発時に、GHQの指令によってできた警察予備隊に端を発する組織である。また、旧海軍の残存部隊が、近海に大量に沈んでいる機雷を除去するために、これもGHQの指示によって海上警備隊として存続した。

1954年に自衛隊法が制定されて、これらの組織が統合され、陸上自衛隊、海上自衛隊となり、航空自衛隊も新設されて、今の自衛隊となった。

自衛隊は「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」ものとされ、人命救助などの災害派遣や国連PKOへの派遣などの国際平和協力活動を副次的任務とするものである。

一方、日本国憲法第9条に、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と定めているために、これ以来、自衛隊違憲論争が延々と続いてきている。

私の出身地の舞鶴でも、自衛隊員の子供が差別され、転校せざるを得ないということも起こった。しかし、阪神淡路大震災、東日本大地震などでの震災復旧活動が評価され、市民との距離は近くなって、自衛隊必要論が国民の多数を占めるようになってきた。

これらの活動は海外にも放映され、日本の自衛隊侮りがたしとの印象を与えたと聞く。よく訓練された自衛隊は戦争抑止力になっている。

違憲論に対抗するために、政府は、自衛隊は軍隊ではないと主張、自衛官を特別国家公務員とし、文民規定を適用している。しかし、PKOなど海外での活動が始まっている中で、文民としていると、正当防衛や緊急避難に該当しない戦闘行為は、敵国の刑法犯となる恐れがある。自国で軍人としての法的地位を与えられていない者は軍人と認めず、捕虜に関するジュネーブ条約が適用されない可能性がある。自国の法律以上の保護を外国である敵国が与えることなど到底あり得ない。

戦車や航空母艦、戦闘機を持ち、日々訓練してる自衛隊は誰が見ても軍隊である。自衛隊の自衛とは、国を護ること、すなわち国防である。国防軍としての法的認知が必要である。

自衛隊の活動を誤解させるものに2つある。1つは、右翼の街宣車。自衛隊の迷彩服を身に付けてマイクで大きな声をあげる。自衛隊のイメージが悪くなる。もう1つはマスコミだ。6月になると沖縄戦の様子、8月になると広島・長崎の原爆投下のシーンが何度も映し出される。戦前、マスコミがあおって、人々を戦争に駆り立てた。毎年毎年同じことが繰り返されると、自衛隊は「悪のイメージ」が定着し、隊員のモラルダウン、すなわち自衛力低下を招くことになる。

最後に、国民一人一人に自衛の気構えが必要である。トランプ大統領の言のように「韓国から米軍を引上げる」ということになればどうなるか。北朝鮮と韓国の間の有事の際には、在韓邦人約4万人の救出はどうするのか。米軍の基地は使えるかもしれないが、米軍兵士及び家族の救援が先になるだろう。そうなると、釜山と対馬の間に海上自衛隊が展開し、救出するということになるのだろうが、釜山までどうして運ぶのか。極めて困難な事態になる。極秘裏であるが、自衛隊はこうしたことも想定し、臨戦態勢で図上演習をしている。

(文責・瀬野鋼太郎・S46年・経営学部卒)

ビアパーティー・留学生を励ます会

日時 :2018年8月10日(水) 18時30分~20時30分

場所 :大阪凌霜クラブ・ホール

本年も恒例のビアパーティが一般社団法人大阪凌霜クラブ/神戸大学学友会大阪クラブ、一般社団法人凌霜会大阪支部の共催で盛大に開催されました。留学生13名をむかえ、総勢70名も集まりました。留学生は台風・地震の影響で補講等の影響もあり、例年より7名ほど少なくなりました。

冒頭、宮本理事長が挨拶致しました。来賓の方々の紹介に続き、武田学長のご挨拶が続き、原学友会会長のご挨拶と続き、大坪凌霜会理事長のご発声により全員で乾杯を致しました。

神戸大学への海外からの留学生は、97か国1300人にも及び、今回は10か国13名の方々を招待しました。真夏を盛り上げるべく軽音楽部の若江先輩のピアノにのせて、竹田さんの女性ボーカルで始まりました。この頃になると歌はバックグラウンドミュージックのようで聴きながら生ビールを飲むという感じになってきました。

次に、若手の会湯山さん・揚倉さんの司会、通訳の堀口さんで留学生のスピーチを頂いた。アルメニア、イギリス、中国、インドネシア、カンボジア、ニカラグア、ラオス、ヨルダン、キプロス、中国の13名にスピーチを頂きました。文系、理系を問わず、いろんな研究に携わる方々がおられました。日本のマンガ論を展開した方も2人おられ、マンガが日本文化として世界中で認められていると感じました。1人1人が自覚して日本に来て勉強しようという意欲と姿勢が感じられました。

続いて若手の会の元気印、落合&谷口両代表、松井顧問・藤田さんが仕切る、沢山の景品をそろえたプレゼント抽選会が始まりました。景品が当たるたびに感想を述べていただき、珍解答も続出。笑いのうちに終了をむかえました。

最後は次期の乾運営委員長の挨拶で終わりました。

(文責・瀬野鋼太郎・S46年・経営学部卒)



出席者合計66名

7月定例会

日時 :2018年7月17日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :鴻池 一季氏(㈱鴻池組 名誉会長)   

演題 「歴史的建造物の保存・修復について」

今月は鴻池組名誉会長鴻池一季氏にお願いしました。

鴻池組は数々の歴史的建造物の保存・修復を数々手がけているということです。大手建設業は歴史が江戸時代・明治時代と古く神社・仏閣を請負う宮大工の棟梁だったり、宮大工を使ったり、協同作業をしていたりしたことがルーツのようです。

 今回は様々な10件の例をご披露頂きましたが、誌面の都合で6例を紹介します。

① 明石城巽櫓・坤櫓の修復

1618年徳川秀忠の命により築城。1995年の阪神淡路大震災で被災。巽櫓・坤櫓、石垣が修復されました。小学校の遠足や中学・高校の時、近くの陸上競技場での競技会にチラリと見た程度でした。しかし、つい最近、高架になったJR明石駅からは真正面にシンメトリーに白く美しい姿を見せてくれます。櫓を動かす技術に驚きました。レールを敷き上にコロを何本もころがし、更にその上に大きなスキー板のようなものを取り付け70㍍も移動するそうです。まるで山を動かす技術に驚か増した。お話を聞きもう一度ジッリと鑑賞したいという気持ちが募りました。

② 篠山城跡大書院復元建築工事

1609年徳川家康の命により松平康重いが築城。西北の方面ににらみをきかす位置づけ。1944年に失火、2000年に復元した。神社建築は簡単な木材組み合わせだが、中国から仏教建築が入り複雑化した。小屋組組立・垂木野事板取付、破風板取付、軒先廻り造作工事、大書院中門棟杮葺の沢山の工程を経る。10年位前に篠山城に行き、堂堂たる書院造を見て、眼下に城下町を見下ろし、はるか遠くにゴルフ場を眺めた光景が浮かぶ。

③ 天龍寺法堂大方丈の改修

後嵯峨天皇の皇子亀山天皇の離宮として造られた。15世紀夢想礎石の助言で足利尊氏が後醍醐天皇の菩提を弔うため天龍寺を造営した。開山六百五十遠忌(2000年)記念整備事業計画に基づくものであった。建物全体をジャッキアップ工事、内部耐震補強他内部の補強に重点が置かれた。

④ 史跡志波城跡

803年盛岡市にある坂上田村麻呂が築いた日本最古の城柵。政庁南門・西門築地塀等の復元工事。

⑤ 周防國国分寺金堂保存修理

741年聖武天皇の詔により各国が建立を命じられた。1417年焼失、1421年大内盛見により金堂が再建された。1779年毛利重就により現在の金堂が建立された。前の修理から250年経過。屋根瓦、野路根板をはずした。瓦・部材の再利用を出来るだけ利用した。盛大な落慶法要だった。震災で尼崎の本興寺の技能顧問の方をむかえて取り組んだ。

⑥ アンコール遺跡保存修復プロジェクト

カンボジア北東にある30キロ四方に700の史跡が点在する。日本政府が援助し早稲田大学の中川武教授が指導している。ワットとは遺跡のこと。アンコールとは村・城郭、ワットは寺院、トムは大きいという意味。9世紀~15世紀に栄えたクメール人の遺跡。

講師の鴻池さまは、

・ 歴史的建造物はその他の文化財同様人類の貴重な遺産である。

・ 自然環境、戦乱により破壊され危機に直面している。

・ 貴重な人類の資産を保全する努力の継続が求められる。

・ 保全に当り歴史的背景や環境に配慮し入念な計画と丁寧な施工が必要。

等々、お寺巡り・神社巡りの見学の基礎の基礎を勉強した感じがしました。

実例をスクリーンに写しながら数々の修復工事についてご説明頂きました。歴史の教科書をなぞりながら、その保存・修復について語って頂きました。日本の神社は中国から仏教建築様式を取入れ、より美しい建造物になったとの説明が印象に残りました。又、古い建築用語や古語が出てきた楽しいお話でした。

(文責・瀬野鋼太郎・S46年・経営学部卒)


出席者合計49名

 

5月定例会

日時 :2018年5月15日(火)19時より

場所 :大阪凌霜クラブメインホール

講師 :橋本 長道 氏 氏(小説家)   

演題 :「元奨励会員より見た将棋界 ~プロを目指す人生 その成功談、失敗談、裏話~」

 

中学生棋士藤井聡太さんの29連勝や羽生善治さんの国民栄誉賞授章などで将棋がブームになっている中で、5月度は、かつて将棋のプロを目指した橋本長道さんに、プロへの登竜門である奨励会時代の経験を中心に将棋界について語ってもらった。

 橋本さんは、1984年生まれの34歳。兵庫県中学将棋大会で優勝し、1999年から2003年まで高校に通いながら奨励会でプロを目指す。しかし、周りの天才たちを見てプロへの道を断念し、2004年神大経済学部に合格、2008年に卒業し、民間企業に勤めたが1年で退職し、今度は小説家のプロを目指す。2011年スバル新人賞を「サラの柔らかな香車」で受賞。2014年「サラは銀の涙を探しに」出版、2018年「奨励会~プロ棋士への細い道」出版予定。

プロ棋士は割に合う職業か

 現在、プロ棋士は150名程度しかいません。その他女流棋士が40名ほどいます。賞金と対局料が主な収入になります。2017年の賞金ランキングでは、トップの渡辺竜王(当時)が7534万円、10位で1900万円。20位で1300万円です。対局数は多い人で年間5~60局なので、コストパフォーマンスは高いのではないかと思います。ただ、奨励会の三段リーグを勝ち抜いてプロ棋士になるための難易度は非常に高いので、誰でもなれる職業ではありません。

 トップ棋士がAI(将棋ソフト)に勝てなくなったことや、スポンサーである新聞業界の見通しが明るくないので、将棋界の将来を心配する向きがあります。しかし、将棋より早くソフトに勝てなくなったチェスの人気は全く衰えていませんし、最近の将棋ブームもソフトに勝てなくなってから起こっていますので、人間同士の勝負の面白さとAIは別と考えていいのではないかと思います。また、スポンサーには最近、サイバーエージェントなどIT企業が登場してきています。

奨励会というところ

 プロ棋士になるためには、東京と大阪にある奨励会(正式名称は新進棋士奨励会)に入らなければなりません。奨励会受験には町道場で、四段から五段は必要です。小学生が「プロ棋士になりたい」と言い出すと、説得しても聞かないので、諦めさせるために受験させる親御さんもいます。奨励会には6級から3段までの段位級があり、一定の勝ち星を挙げると昇級・昇段していき、三段になると約40名で争う「三段リーグ」に参加し、半年に上位2名が昇段し、4段になってやっとプロとなり、対局料が出ます。奨励会には年齢制限があり、基本的には26歳までに四段に上がれなければ強制退会となります。

 私は、一次試験(受験者同士の対局)は、3勝3敗で通過。二次試験(現役奨励会員と対局)は2勝1敗で合格しました。2勝のうち1勝は、現在Aクラスの糸谷哲郎八段(当時6級)でした。

 奨励会に3年在籍し、対戦した相手で、怪物と感じたのは、現在の佐藤天彦名人、豊島將之八段、稲葉陽八段、糸谷哲郎八段です。他に和田澄人という天才と称された奨励会員がいましたが、彼は三段リーグで「努力する天才」たちに敗北し、プロにはなれませんでした。

 棋士は、賭け事が好きでパチンコ、スロット、麻雀にはまる者もいます。棋士はゲームも得意で、月50万円ぐらい稼ぐ者もざらにいました。ただし、将棋を辞め、パチプロ、スロプロになった人たちは現在私の知っている限り全員廃業しています。親元を離れ東京や大阪で1人暮らしするので誘惑も多く、落ちこぼれる人が多いのが現実です。

奨励会退会、神大卒業後の人生

 奨励会退会後に京大に3回落ち、神大後期試験で合格しました。2008年に卒業し商工組合中央金庫に就職しましたが、企業風土に嫌気が差して1年で辞め、小説家を目指し、再びモラトリアム状態になりましたが、投稿を始めて1年目でスバル新人賞を受賞することができました。しかし、2作目がなかなか書けない。東京での1人暮らしが裏目に出て、生活を律することができず、人生の壁に突きあたりました。故郷の小野に戻り、将棋の指導や投稿など少し生活が落ち着き、新作を6月に出版予定です。「奨励会~将棋棋士への細い道」(マイナビ新書)。是非、読んで下さい。


出席者合計29名

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