定例会報告

2020年度定例会報告

11月定例会

日時:令和2年11月17日(火)

場所:大阪凌霜クラブ本館ホール

講師:栗木 契氏(神戸大学大学院経営学研究科教授)

演題:「『カイゼン』とエフェクチュエーシヨョン」

 今月は神戸大学の栗木先生に講演頂きました。
 コロナ禍のもとで、マーケティング研究から企業の経営者や実務家の方たちに対して何が発信できるかと考え、今回はトヨタの事例を取り上げることにしました。今回お話しするのは私が一から調べ上げた事例ではなく、すでに報道されている情報などを突き合わせながら見えてきたことです。グローバル時代のなかにあって、日本企業が活力を保っている知恵の一端が、危機のなかで示されたと考えています。

 エフェクチュエーションは、企業家=起業家の意思決定を定式化した理論で、ハーバード・サイモンの最晩年の弟子、サラスバシの研究から始まります。2000年代以降にビジネス領域で世界の研究者と実務家のあいだで注目を集めるようになっています。
 経営学、経済学では、企業家=起業家とは、シュンペーターの創造的破壊=イノベーションの担い手と位置づけられます。企業家は、経済を静的にとらえるのではなく動的にとらえ、ダイナミックに発展させる原動力となります。
このイノベーションの機会を企業家はどのように見つけだすのでしょうか。企業家的機会は、情報の広範な収集と、検証の高度化によって入手できる考えられてきました。
 しかしサラスバシが実証を通じて見つけた答えは、違っていました。起業を進めるには、手持ちの情報やネットワークを生かし、まずは行動を始めよ。そして目的変更を厭わない柔軟な姿勢で、改良を積み重ね前進せよ。そのための日々に振り返りと情報収集は怠らないという姿勢でした。 

 企業的機会の探索と災害時の対応の共通点は、不確実性のなかで機会をたぐり寄せる行動となる点です。創造的破壊とは未知の課題に挑む行動ですから、どうしても不確実性がつきまといます。新型コロナのような未知のウィルスへの対策についても同じです。情報収集は大切ですが、完全な情報が整うことを待っていては、行動が遅れます。情報収集やその検証に時間をかけてはいられないのです。大きく社会を変革する起業と、災害時の企業行動は、予測が極めて難しい状況のなかでの行動となる点で共通します。 

 今年の2月にコロナ禍が中国から欧米に拡大する直前の時期に、日本企業が直面していたのはグローバルサプライチェーンの寸断の問題でした。武漢などの中国の都市が封鎖され、各地の従業員が工場に出勤できなくなるなかで、日本国内の生産現場への部品や資材の供給が滞りはじめます。この時点で未来を正確に予測して断言できた人はいなかったはずですが、リーマンショック以来の経済危機が生じる可能性については多くの人が口にし始めていました。しかし警鐘を鳴らすことはできても、グローバルに連なるサプラーチェーンのどこでどのようにトラブルが広がっていくかの予測は困難であり、現場の対策は二転三転を続けます。
 グローバルに広がるサプラーチェーンの混乱と不安の高まりは、販売面にも影響をおよぼします。この1~3月の混乱で、多くの企業の利益が吹き飛びました。その中でも利益を保った企業がトヨタです。しかしリーマンショックの際にはトヨタも、60年ぶりの赤字に転落しています。その後トヨタは「カイゼン」を重ね、予測が困難な状況のなかでもグローバルサプライチェーンを引き締まったかたちで動かし続ける方向に進んでいます。

 コロナ禍が広がるなかで、トヨタでも中国の工場の業務が止まり始めます。グローバルに問題が広がっていくなかで、トヨタでは各部品工場と組立工場の状況を把握し、生産を振り替えるとともに、各工場の必要在庫を保つべく、その先にある自社外の調達先工場についても状況を把握しながら、調達を振り替えたりしています。グローバルサプライチェーンを止めないためのこの対応の様子はすでに報道されています。
 リーマンショック、そして東日本大震災以降の10年ほどでトヨタは、世界の各所の災害が起こるたびに自社工場だけではなく、部品や素材の調達先にまで、可能な限り自社スタッフを派遣し、操業の回復を支援するとともに現地確認を行い、調達先を組み込んだグローバルサプライチェーンのデータベースを整えてきました。人間関係を培いながらのデータベースの整備が進んでいます。

 今回のコロナ禍のもとでも、このデータベースと人間関係を生かして、日々の情報からの判断と、生産と調達の切り替えの指示が続きます。そこでは適確さに加えて迅速さが必要ですから、トヨタ上層部は、グローバルサプライチェーンの稼働維持という機能に関しては、この対策部署に権限を渡し、上層部に報告を上げることなく、意志決定と指揮を続けることを認めています。もちろん豊田章男社長が状況を知りたいと思えば、説明を受けることはできるのですが、そのためには章男氏がこの部署に出向かなければならないのだそうです。

 コロナ禍のような災害に直面すると、私たちは「この先どうなることか」と思い、未来の予測が欲しくなります。しかしトヨタは予測に頼るのではなく、日々上がってくる情報と、手持ちのデータベースと人間関係を活用しながら、柔軟な切り替えによってグローバルサプラーチェーンの操業を続けています。これは予測に頼らない行動だという点で、エフェクチュエーションによる企業家の行動と共通します。
 一方で、予測はできなくても、備えることはできることもトヨタの事例から見えてきます。危機における柔軟で迅速な組織行動には、権限移譲が有効だと経営学の教科書には書かれています。しかし、原則を守るだけではなく、徹底させる知恵が、大きな組織が大企業病に陥らないためには必要です。社長が知りたければその部署に出向くというのは、徹底していると思います。こうした危機の際の対応はあらかじめ決めておかなければなりません。

 権限を組織のどこに渡すかも重要です。地域間、工場間の相互依存性が低い企業であれば、地域ごと、工場ごとの判断を認めるという対応も有効です。しかしグローバルに連なるサプラーチェーンでは、こうした権限委譲は地域間、工場間の調整に混乱を引き起こし、かえって問題を悪化させかねません。トヨタは、相互依存性の高い調達問題という機能に絞って、特定部署への権限委譲を行っています。
 加えて平時の状態のとき、あるいは小さな危機に直面するなかで各種のデータと人間関係を整えておくことが重要であることにも気づかされます。全員、自分が会社を切り盛りするという意識が醸成されていることも大切です。

(文責:瀬野鋼太郎・S46年経営学部卒)

出席者合計23名
(Zoom参加5名)


9月定例会

日時:令和2年9月15日(火)

場所:大阪凌霜クラブ本館ホール

講師:中川 秀昭氏(「姫路城を守る会」前理事長)S46年3月経営学部卒

演題:「世界遺産姫路城の魅力」

今月は中川秀昭氏に講演をお願いしました。昭和46年3月経営学部卒業です。定例会のまとめを書いている瀬野と同学年、同学部です。
はじめに姫路城の改修が頭に浮かびました。そう白鷺城、優美な姿が瞼に浮かびました。多くの人に聞いてみると、みんな2、3年前と思っていました。誰も眩うばかりの白鷺のイメージがあるのか、つい最近と思っていましたが、平成27年(2015年)のこと。もう5年も経過しています。

講師のお持ち頂いた資料の復元図(「姫路城内郭内復元鳥瞰図」、鳥瞰復元図の範囲(内曲輪)は、約23haと言われています。)は、18世紀の初め、元禄~宝暦年間の復元図を見ると、甲子園球場の約6倍になります。見上げる大天守は、高さ約100メートル。(天守台高さ14.8m、大天守高さ31.5m、姫山高さ45.6m、合わせて海抜91.9mです。) 将に羽ばたく白鷺です。

①現存する城郭建築の最高傑作…築城は古く1346年とも1555年とも言われる。関ヶ原の戦いの後、築城ラッシュが始まる。姫路城も、城主池田輝が慶長6年(1601年)から慶長14年(1609年)に掛けて大改修した。

②城とはもともと戦うための砦。左巻きらせん縄張り、巨大迷路で敵の目を欺く、幾重にも複雑な防御と攻撃の仕掛け。鉄砲を撃つための狭間。石垣を登る敵をめがける石落とし。美しさの中に戦うための叡智ず秘められている。

③戊辰戦争、明治の廃城令、太平洋戦争のB29姫路市内の爆撃などの危機を乗り越え数百年の歳月を耐え抜き、姫路城は美しい雄姿を今に止めている。その陰にはこの城を後世に残そうと江戸時代から明治・大正・昭和・平成と絶え間なく続けられた先人たちの保存継承へとたゆまぬ努力があった。

姫路城の魅力をたっぷり語って頂きました。
姫路駅に佇み北を眺めるとお城が見える。仕事で姫路市に行ったこともあるが、お城は見ず仕舞。講師のお話も聞き、ゆっくりとお城をめぐりたい気持ちになりました。                  

(文責:瀬野鋼太郎・S46年経営学部卒)

出席者合計24名
(Zoom参加3名)

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